精選版 日本国語大辞典 「一世」の意味・読み・例文・類語
いっ‐せ【一世】
〘名〙
① 仏語。過去・現在・未来の三世(さんぜ)のうちの一つ。
※米沢本沙石集(1283)一「然ればかく親(まのあたり)尊躰を拝し、御言をも承る、是れ一世の事には侍らじと」
② 生まれてから死ぬまでの間。一生。
※文明本節用集(室町中)「人生二一世(イッセ)間一如二白駒過一レ隙」
③ (「一世の」の形で下にも名詞を伴って) 一生に一度あるかどうかの大事な、の意を添える。
※浮世草子・好色一代男(1682)八「八百屋、肴屋いさみをなして、しきしゃうの疱丁人、此威勢、一世の思ひ出也」
④ (子を「二世」、孫を「三世」というのに対して) その人の代。一代。
※続日本紀‐大宝三年(703)二月丁未「其封戸止レ身、田伝二一世一」
⑤ (孫の代までを二世、曾孫までを三世というのに対して) 父から子への一代。父子ただ一代にわたるのをいう。
⑥ (親子の縁は一世、夫婦の縁は二世ということから) 親子のことをいう。→一世(いっせ)の縁(えん)。
※説経節・説経苅萱(1631)上「一か一もん、一せのふもにいたるまて、むけんさんあくたうにおとし」
⑦ =いっせい(一世)②
※春迺屋漫筆(1891)〈坪内逍遙〉をかし「仏国の数学大家 Nicole の学名一世(セ)に轟きたりしころ」
⑧ =いっせい(一世)⑤
※俳諧・笈日記(1695)中「金剛が一世の時の花盛〈支考〉 つつじに木瓜(ぼけ)の照わたる影〈左次〉」
いっ‐せい【一世】
〘名〙
① 生まれてから死ぬまでの間。一生。一代。いっせ。
※椿椿山宛渡辺崋山書簡‐天保一〇年(1839)八月一八日「何にても一世に烜赫仕度候所」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一「彼の一世の大著述なる仏国革命史を」 〔史記‐留侯世家〕
② その時代。当代。当世。いっせ。
※小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉五「彼も一世の豪傑なり」 〔荘子‐天地〕
③ ひとりの君主、または、家長の支配している間。一代。〔春秋左伝‐昭公元年〕
④ 世間残らず全部。挙世。
※西国立志編(1871)〈中村正直訳〉一二「その能く一世を風靡すること、ただ千言万語の教訓のみにあらず」 〔列子‐天瑞〕
⑤ 同じ血統や同じ流派の祖、また、同名の法王、皇帝のうち、最初の者。第一代。いっせ。
※随筆(明治初)〈西周〉宇内の三傑「我が国の太閤と元の太祖とフランスのナポレオン一世とは宇内の三傑なり」
⑥ 移民などの最初の代の人。
⑦ 百年。一世紀。〔慶応再版英和対訳辞書(1867)〕
ひと‐よ【一世】
〘名〙 この世に生きている間。一生。
※万葉(8C後)五・八九一「一世(ひとよ)には二遍(ふたたび)見えぬ父母をおきてや長く吾(あ)が別れなむ」
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