ワークシェアリング(読み)わーくしぇありんぐ(英語表記)worksharing

翻訳|worksharing

精選版 日本国語大辞典 「ワークシェアリング」の意味・読み・例文・類語

ワーク‐シェアリング

〘名〙 (work-sharing) 失業の増加を防ぐため、労働時間を減少させ、仕事を分け合うという考え方ジョブシェアリングとも。〔十年後(1983)〕

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デジタル大辞泉 「ワークシェアリング」の意味・読み・例文・類語

ワーク‐シェアリング(work-sharing)

《「ワークシュアリング」とも》労働時間の短縮などにより、より多くの人で仕事の総量を分け合うこと。主に、雇用の維持・創出目的として行われる。→ジョブシェアリング
[補説]目的によって以下のように分類される。
雇用創出型失業者を減らすために労働時間を短縮し、多くの労働者のために雇用機会を作る。
雇用維持型従業員一人あたりの労働時間を短縮し、社内で仕事を分け合って、一時的な景気悪化や中高年層の雇用確保に対応する。
多様就業対応型正社員の勤務時間や勤務形態を多様化し、女性や高齢者など、さまざまな就労条件に対応した雇用機会を作る。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワークシェアリング」の意味・わかりやすい解説

ワークシェアリング
わーくしぇありんぐ
worksharing

従業員1人当りの労働時間を減らし、その分で他の従業員の雇用を維持したり、雇用を増やしたりする試み。「仕事の分かち合い」と訳されることが多い。長引く不況で失業率が上昇した1970年代のヨーロッパで生まれた概念で、不況期になると、導入論が各国でもちあがる。日本でも2002年(平成14)3月、政府、日本経営者団体連盟(日経連)、日本労働組合総連合会(連合)がワークシェアリングについての基本的な考え方と、実施のための環境整備の具体化について合意している。また、サブプライムローン問題に端を発した世界同時不況時の2009年1月には、日本経済団体連合会経団連。2002年5月に日本経営者団体連盟と経済団体連合会が統合して発足)と日本労働組合総連合会の労使双方が導入について議論した。

 ワークシェアリングは、不況時に従業員の数を減らさないようにする「緊急避難型」、社会全体として個人の労働時間を減らす「雇用創出型」、主婦や高齢者に労働の機会を提供する「多様就業対応型」に大別される。さらに年齢や目的を細かく分けて、4分類や6分類とする考え方もある。

 オランダで1982年に合意したワッセナー合意Wassenaar Agreementがもっとも成功した例として有名。このとき、経営者は雇用機会を提供し、労働組合は賃金抑制を受け入れ、政府は減税を断行して10%を超える高い失業率を克服した。このほか1993年にドイツの自動車大手フォルクスワーゲン社が労働時間を短縮して従業員の解雇を避ける協定を労使で結んだ例がある。これは「緊急避難型」にあたる。1998年にフランス政府が法定労働時間を短くしたが、これは政府主導の「雇用創出型」の取り組みである。

 ただし、ワークシェアリングは、一時的に雇用を維持できても、賃金抑制を伴うため、景気刺激効果は小さいとの議論もある。

[矢野 武]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワークシェアリング」の意味・わかりやすい解説

ワークシェアリング
job-sharing

一つの仕事を複数の人で分担する,仕事の分かち合いのこと。不景気などで雇用機会が減少しているときに,従業員の労働時間を短縮する一方,パートタイマーや高齢者などに仕事を配分することで新たな雇用機会を創出,雇用水準を維持する取り組み。高失業率に悩んだ欧米で導入が進み,フランスでは法定労働時間を週 39時間から 35時間に短縮することで雇用拡大に成功した。またオランダではパートタイムを「短時間で働く正規雇用労働者」と位置づけ,同一労働同一賃金の原則を徹底した結果,就業形態が多様化し,1980年代半ばに 10%超あった失業率が 2000年には3%にまで低下した。日本では賃下げへの抵抗感が労働組合側に強く,導入が遅れていたが,失業率が過去最高水準となるなか,雇用確保の切り札として注目を集めた。

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知恵蔵 「ワークシェアリング」の解説

ワークシェアリング

従業員1人当たりの労働時間を減少することで、雇用水準を維持する政策手法。厚生労働省の分類では、(1)多様就業対応型、(2)雇用創出型、(3)雇用維持型(中高年対策)、(4)雇用維持型(緊急対応)、の4タイプ。2002年に日本の政労使間で検討されたのは、(1)と(4)の2タイプ。前者は、勤務時間や日数の弾力化、フルタイムのパートタイム化などの手法により、現在の労働者と潜在的な労働者との間で仕事を分かち合い、社会全体で雇用機会を創出することが目的。後者は、一時的な景気の悪化を乗り越えるため、緊急避難措置として従業員1人当たりの所定内労働時間を短縮し、多くの雇用を維持する目的で実施。雇用されている従業員間で、仕事を分かち合う形になる。

(桑原靖夫 獨協大学名誉教授 / 2007年)

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百科事典マイペディア 「ワークシェアリング」の意味・わかりやすい解説

ワークシェアリング

景気後退時の雇用調整の方法の一つ。本来は,労働者の失業問題が生じた時に仕事を分かち合うという概念。1970年代にロボットなど産業機器が失業を生むとの労働団体の批判に対し,フランスのミッテラン大統領がワークシェアリングを主張。現在では労働者の雇用は確保したまま,一人当りの労働量を減らす方式をいう。解雇やレイオフがしにくい日本の大企業が主にこの方式を取る。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「ワークシェアリング」の解説

ワークシェアリング

仕事を分かち合うこと。1人当たりの労働時間を短縮することで、社会全体の雇用者数の増大を図る考え方。1人当たりの賃金を下げてでも雇用を確保し、失業者を減らすことが主な目的。すでにドイツ・フランス・オランダなどEU圏の一部で実験的に導入され、オランダのように大きな実績を上げている国もある。しかし、日本では、独自の雇用環境などがあるため、必ずしも普及しないというのが一般的な考え方である。雇用保険、労働者災害補償保険(労災保険)など雇用時にかかる経費の高さなどが導入の進まない原因のひとつとされている。

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人材マネジメント用語集 「ワークシェアリング」の解説

ワークシェアリング

・work sharing
・担う責任や役割を分け合ってひとつの業務(役職)を担当すること。
・企業としては、雇用の維持・拡大の意味で活用できる施策として特にヨーロッパで活用されている。一方、従業員側としては、育児や家庭の都合等、諸事情でフルタイムでの勤務が厳しい場合等に、有効に活用できる施策として活用されている。
・ヨーロッパでは、責任あるポジションの仕事においても、適用されているケースがある。

出典 (株)アクティブアンドカンパニー人材マネジメント用語集について 情報

就活用語集(就活大百科 キーワード1000) 「ワークシェアリング」の解説

ワークシェアリング

「ワークシェアリング」とは、「労働時間の短縮などにより、より多くの人で仕事の総量を分け合うこと」(※大辞泉より)をいいます。1つの仕事を大人数で分割して行うことで、1人あたりの労働時間が短縮され、多くの人で仕事を分け合うことができます。高齢者の雇用対策や、不況時の労働対策などで注目された方法です。

出典 マイナビ2012 -学生向け就職情報サイト-就活用語集(就活大百科 キーワード1000)について 情報

人事労務用語辞典 「ワークシェアリング」の解説

ワークシェアリング

英語でWork Sharing。雇用機会、労働時間、賃金という3つの要素の組み合わせを変化させることを通じて、限られた雇用量を、より多くの労働者の間で分かち合うことです。日本では不況下での厳しい雇用情勢の改善に効果があると期待され、大きな関心と注目を集めました。
(2004/10/25掲載)

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