ワラジムシ(英語表記)Porcellio scaber

改訂新版 世界大百科事典 「ワラジムシ」の意味・わかりやすい解説

ワラジムシ (鼠姑)
wood louse
Porcellio scaber

等脚目ワラジムシ科の小型の純陸生甲殻類。世界中に広く分布しており,わら,枯葉や塵芥の間,石や木材の下など,湿気を含む暗所にきわめてふつうに見られる。体長11mmくらいになる。体は背腹に扁平,長楕円形,幅は体長の約半分くらい。暗褐色または灰褐色をしており,体表に粗い顆粒の横列がある。同科のダンゴムシのようには体を球形に丸めない。ワラジムシ亜目には,気管を腹肢にもたないフナムシ科と,気管を腹肢にもつワラジムシ科,ハマワラジムシ科,ダンゴムシ科,ハマダンゴムシ科などを含む。ワラジムシの腹肢の外肢には白色体white bodyと呼ばれる大きな斑紋のように見える部分があるが,これはキチン質の外皮が二次的に内部に陥入して,細かく枝分れした擬気管pseudotracheaに発達しており,これによって空気呼吸をしている。白色体の構造や発達の程度は種類によってそれぞれ異なっている。

 ホソワラジムシPorcellionides pruinosusはワラジムシに似て,第2触角鞭状部は2節からなる。ごくふつうに見られ,全世界的に広く分布する。体が幾分細長いこと,腹部は最後の胸節の幅に比べ急に狭くなっていること,体の背面は微小な顆粒におおわれていることなどでワラジムシと容易に区別できる。タマワラジムシAlloniscus perconvexusは体長9mmくらい,第2触角鞭状部は3節。本州沿岸の海浜に打ち上げられた海藻や塵芥の間にすんでいる。ハマワラジムシArmadilloniscus tuberculatusは体長5mmくらい。体は幅広い小判形をしており,第2触角鞭状部は4節。本州太平洋岸の海浜に打ち上げられた海藻の山の下にたくさんすんでいる。タマワラジムシとハマワラジムシは北アメリカのカリフォルニアにも分布している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワラジムシ」の意味・わかりやすい解説

ワラジムシ
Porcellio scaber

軟甲綱等脚目ワラジムシ科 Porcellionidae。体長 1cm内外。体は扁平な縦長の長楕円形で,灰褐色ないし暗褐色の地に淡黄色の斑紋がある。体の大部分を七つの胸節が占め,6節からなる腹部は後方に小さくまとまっている。第1触角は微小であるが,第2触角は長く,3ヵ所で折れ曲がる。世界に広く分布し,人家近くの落ち葉,ごみ,石,倒木の下など湿った環境にすむ。近縁のホソワラジムシ Porcellionides pruinosus は青褐色ないし暗褐色で,淡色の不規則模様があり,きわめて普通に見られる。また浜辺に打ち上げられた海藻やごみの下にはタマワラジムシ Alloniscus perconvexus が見られる。なおワラジムシ科は,ダンゴムシ科(→ダンゴムシ)とともに陸生甲殻類の代表的なものであるが,ダンゴムシ類と違って手で触れても球状にならない。(→節足動物等脚類軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワラジムシ」の意味・わかりやすい解説

ワラジムシ
わらじむし / 草鞋虫
[学] Porcellio scaber

節足動物門甲殻綱等脚(とうきゃく)目ワラジムシ科に属する陸上動物。ユーラシア大陸原産といわれるが、現在では世界に広く分布している。長さ1センチメートルほどの紡錘形で、弱く左右に湾曲している。頭部に続く7胸節はほぼ等長で、背面にやや大きな顆粒(かりゅう)が横に並んでいる。近縁種のホソワラジムシPorcellionides prunosusも、ほぼ同じ大きさであるがやや幅が狭く、背面はほとんど滑らかにみえる。両種とも枯れ葉やごみの下などにごく普通にみられるが、人家の床下などにはワラジムシが多い。

[武田正倫]

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百科事典マイペディア 「ワラジムシ」の意味・わかりやすい解説

ワラジムシ

甲殻類等脚目ワラジムシ科の1種。体長11mmぐらいで,体色は灰褐色ないし暗褐色。頭部は小さく,7個の胸節は幅広く,腹部は小さくて6節。世界各地に分布し,庭石,朽木,枯葉などの下にすむ。類縁のオカダンゴムシに似ているが,体を球形にまるめることはない。

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