ワッセルマン反応(読み)ワッセルマンはんのう(英語表記)Wassermann reaction

精選版 日本国語大辞典 「ワッセルマン反応」の意味・読み・例文・類語

ワッセルマン‐はんのう ‥ハンオウ【ワッセルマン反応】

〘名〙 梅毒血清診断法。一九〇六年ワッセルマンとM=ナイセルによって開発された。患者の血清に牛の心臓から抽出精製した燐脂質モルモットの新鮮血清とを加え、さらにヤギ、羊などの赤血球溶血素血清を加えて溶血の有無を判定する。
誕生日(1977)〈津村節子〉「血沈やワッセルマン反応をとる」

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デジタル大辞泉 「ワッセルマン反応」の意味・読み・例文・類語

ワッセルマン‐はんのう〔‐ハンオウ〕【ワッセルマン反応】

梅毒の血清診断法。病原体トレポネマの代用抗原と血清との補体結合反応を利用するもので、溶血が起これば陰性とする。1906年にワッセルマンとナイセルが発見

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改訂新版 世界大百科事典 「ワッセルマン反応」の意味・わかりやすい解説

ワッセルマン反応 (ワッセルマンはんのう)
Wassermann reaction

WRと略す。梅毒血清反応の一つ。梅毒病原体のトレポネマ・パリズムTreponema pallidum多く含むと考えられた先天梅毒胎児肝臓の食塩水抽出液,後にはウシ心臓のアルコール抽出液にコレステロールを加えたものを抗原とし,補体結合反応の原理で梅毒患者血清中の抗体を検出する血清学的検査法。1906年ドイツのA.P.vonワッサーマンによって考案され,まずサル,次いでヒトの梅毒の診断に有効であることが報告された。この方法はワッセルマン反応と呼ばれて有名になり,梅毒の血清学的診断法の代名詞ともなった。ただし,同様の試みはこれ以前にフランスのJ.ボルデらも行っており(1901),補体結合反応の原理をも見いだしていたので,フランスではこの反応をボルデ=ワッセルマン反応と呼ぶことが多い。またブダペストのデートルL.Detreも独立に同じ方法による結果を,ワッサーマンのサルについての報告の約10日後,ヒトについての報告の前に公表している。

 その後,この方法で検出される患者血中の抗体はレアギンreaginで,病原体そのものではないと考えられるようになり,40年代以降になって,ウシの心臓から抽出されるカルジオライピンにレシチン,コレステロールを加えた脂質抗原が用いられるようになった。それとともに多くのすぐれた方法が開発され,ワッセルマン反応で梅毒の血清学的検査法全般を指すことは少なくなってきている。
梅毒血清反応
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワッセルマン反応」の意味・わかりやすい解説

ワッセルマン反応
わっせるまんはんのう

梅毒の血清学的検査法の一つで、梅毒補体結合反応ともいう。1906年ドイツの細菌学者ワッセルマンは、先天梅毒児の肝臓中に梅毒の病原体であるトレポネーマTreponema pallidum(TP)が存在していることから、この肝臓の抽出液を抗原として補体結合反応を行い、梅毒患者血清で陽性となることを発見した。この反応をワッセルマン反応という。その後、TPとは無関係の動物の肝臓や心臓などのアルコール抽出液を抗原として用いてもワッセルマン反応が陽性となることがわかり、さらに改良が重ねられて、現在では、ウシの心臓から分離したリン脂質カルジオリピンcardiolipin(CL)にレシチンとコレステロールを加えたCL‐レシチン‐コレステロールが抗原として用いられている。この抗原と患者血清との補体結合反応で、溶血がおこれば陰性、おこらなければ陽性とみなされる。

[柳下徳雄]

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百科事典マイペディア 「ワッセルマン反応」の意味・わかりやすい解説

ワッセルマン反応【ワッセルマンはんのう】

1906年ワッサーマンA.v.Wassermannらが創始した梅毒血清反応補体結合反応を応用。抗原として初め先天梅毒児の肝臓の水抽出液を用いたが,現在ではカルジオリピン(リン脂質の一種)などを使用。
→関連項目血液検査進行麻痺ワッサーマン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワッセルマン反応」の意味・わかりやすい解説

ワッセルマン反応
ワッセルマンはんのう
Wassermann's reaction

A.ワッセルマンらが発表した梅毒の血清学的診断法。当初,この反応は梅毒の特異的反応と考えられていたが,現在では,梅毒患者で高い陽性率を示すが,非梅毒性疾患でも陽性になることがあり,つまり,梅毒の非特異的血清反応であることが判明している。また,この反応は補体結合反応なので,溶血反応と組合せて結果を判定する。

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世界大百科事典(旧版)内のワッセルマン反応の言及

【梅毒】より

…しかしTPHA法やFTA‐ABS法では陰性となるので,梅毒感染のさいに陽性となる血清反応と区別できる。なお,ワッセルマン反応の語が梅毒血清反応の代名詞のように用いられているが,この方法は現在は用いられていない。
[梅毒の治療]
 ペニシリンが最も有効である。…

【ワッサーマン】より

…ドイツの細菌学者,梅毒の血清反応として有名なワッセルマン反応の発見者。コッホ研究所に入り実験治療と生化学の部長となり,のちカイザー・ウィルヘルム協会実験医療研究所所長となった。…

※「ワッセルマン反応」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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