ワイヤレス・センサー・ネットワーク(読み)わいやれすせんさーねっとわーく(英語表記)Wireless Sensor Network

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ワイヤレス・センサー・ネットワーク
わいやれすせんさーねっとわーく
Wireless Sensor Network

検知の対象となる場所に配置したセンサー(検知器)のデータを収集・利用できるように、センサー間を無線通信で結んだシステム。WSN略記する。センサーで得た情報は基地局に集められ、パソコンなどで処理され既存のシステムのデータとして活用される。国際規格IEEE802.15.4/ZigBee(ジグビー)モジュールのTOCOSワイヤレスエンジンを使用すれば、さまざまな場所でワイヤレス・センサー・ネットワークを構築できる。

 対象箇所に配置される無線通信機能をもつセンサーは、ネットワークからはノード(節)とみられることから「センサー・ノード」ともよばれ、電池など別電源で駆動される。そのため、既存のシステムに影響されず自由な構築や追加が可能で、配線コストが不要という利点がある。また、無線LAN(ラン)のようなアクセス・ポイントは不要で、ノード間で直接連絡が可能なことから、無線接続可能なパソコン、携帯電話、情報処理端末による「無線アドホックネットワーク(自立分散型無線ネットワーク)」と組み合わせて使用できる。アドホックネットワークでは基地局やアクセス・ポイントは不要であるが、端末の絶えざる移動に伴う相互間の結合の乱れには配慮する必要がある。しかし、有線ネットワークに比べリアルタイム性、連結の確実性、セキュリティの点ではいくぶん劣る。

 具体的な利用例としては、家庭内では分散しているテレビ、ビデオ、エアコンなどの電気用品の一括制御、ビル内では空調、照明、エレベーター、消防システム、入出力管理などの総合管理があげられる。その他、電気・ガス・水道の自動検針、健康管理や安否確認、振動やゆがみなどの建物管理などに用いられるが、いずれも追加設置が容易である。また、移動容易なことから野外での農作物への気候測定や森林の環境管理、野生生物の行動・成長などの監視にも使用されている。

 1990年代末以降、携帯電話が普及し無線LANが定着するなど、ユビキタス化が進展するのに伴いPAN(パン)(パーソナル・エリア・ネットワーク)が普及し、多種のセンサーの小型・低消費電力化も進んでいる。これらの技術の進歩と、そのつど制定されてきた国際標準を背景に、普及は加速している。

[岩田倫典 2015年4月17日]

『間瀬憲一・小牧省三・松江英明・守倉正博著『無線LANとユビキタスアドホックネットワーク』(2004・丸善)』『安藤繁・田村陽介・戸辺義人・南正輝著『センサー・ネットワーク技術』(2005・東京電機大学出版局)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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