ロンドン条約(読み)ロンドンじょうやく

精選版 日本国語大辞典 「ロンドン条約」の意味・読み・例文・類語

ロンドン‐じょうやく ‥デウヤク【ロンドン条約】

一九七二年に採択された海洋投棄規制条約。正式名称は、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約。

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デジタル大辞泉 「ロンドン条約」の意味・読み・例文・類語

ロンドン‐じょうやく〔‐デウヤク〕【ロンドン条約】

《「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」の略称》廃棄物その他の海洋投棄の規制を目的とする国際条約。1972年採択、1975年発効。日本は1980年に批准。海洋投棄規制条約。LDC(London Dumping Convention)。
[補説]1972年の条約では水銀カドミウム放射性廃棄物など特定の物質についてのみ投棄を禁止したが、1996年に規制を強化する議定書が採択され、産業廃棄物の海洋投棄を原則禁止とし、浚渫しゅんせつ物・下水汚泥・魚類加工かすなど一部の品目に限って厳格な条件下で投機が許可される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロンドン条約」の意味・わかりやすい解説

ロンドン条約
ろんどんじょうやく

イギリスのロンドンにおいて締結された諸条約。近代の外交史のうえで、ロンドンで締結された条約はかなり多い。これは、イギリスが19世紀から20世紀の前半にかけて、国際政治上の比重が高く、ロンドンが多くの国際会議の議場となったことを反映している。ここでは、ロンドンで締結された条約のうち、歴史的に重要なものをあげる。

(1)1827年7月6日、イギリス、フランス、ロシアの間に結ばれたギリシア独立戦争に関する条約。3国は共同して、ギリシア問題の調停をトルコに申し出るが、トルコがこの調停を拒否した場合は、武力によってギリシア、トルコ両交戦国に休戦を強制することを約した。トルコはこれを拒否したため、3国は10月、ナバリノの海戦でトルコ・エジプト連合艦隊を全滅させた。(2)1830年、ベルギーの独立問題に関して、イギリス、フランス、オーストリアプロイセン、ロシア5か国がロンドンに国際会議を開いて、12月20日、議定書を作成してベルギーの独立を認め、ついで翌31年1月20日および同月27日の議定書によって、ベルギーを永世中立国とし、オランダとベルギーの境界について定めた。31年10月24日、境界を改定した「二十四か条」をロンドン会議が決議し、同年11月15日ベルギーとの間にロンドン条約を結んだ。39年4月19日に至ってオランダはこのロンドン条約を認めた。(3)1834年4月22日、イギリス、フランス、スペイン、ポルトガルの間に結ばれたもの。スペインのカルリスタ戦争について、ドン・カルロスの王位要求に反対し、ポルトガルについてはドン・ミゲルの王位要求に反対した。(4)1840年7月15日、イギリス、ロシア、オーストリア、プロイセンの間に結ばれたもの。エジプトの太守メフメット・アリーに対して、北部シリア、クレタ島、メッカ、メジナをトルコに返還することを求めた。(5)1841年7月13日、イギリス、オーストリア、ロシア、プロイセン、フランス、トルコの間に結ばれたもの。ダーダネルス、ボスポラス両海峡において、平時の外国軍艦の通過を禁止した。海峡条約ともいう。(6)1852年5月8日、イギリス、オーストリア、フランス、プロイセン、ロシア、スウェーデンおよびデンマークの間に署名されたシュレスウィヒ・ホルシュタインに関する議定書。シュレスウィヒ、ホルシュタイン両公国の不可分と独立などを承認した。(7)1867年5月11日、イギリス、フランス、イタリア、プロイセン、オーストリア、ロシア、ベルギーの間に結ばれたもの。ルクセンブルクの独立と永世中立を規定した。(8)1913年5月30日、バルカン同盟諸国とトルコとの間に結ばれたもの。第一次バルカン戦争に終結を与えた講和条約で、これによって、トルコはエーゲ海のエノスから黒海のミディアを結ぶ線以西のバルカン半島の領土およびクレタ島を放棄し、コンスタンティノープル周辺の小地域のほかは、ヨーロッパにおける領土を失った。(9)第一次世界大戦中の1915年4月26日、イギリス、フランス、ロシア、イタリアの間に結ばれた秘密条約(正式の署名は5月9日)。これによって、イタリアは戦勝の場合にダルマチア、トレンティーノ地方などの領土獲得を約され、翌月イギリス、フランス側にたって参戦した。(10)1930年(昭和5)4月22日、アメリカ合衆国、イギリス、日本、フランス、イタリアの間に成立した海軍の軍備制限に関する条約。(11)1936年3月25日、アメリカ合衆国、イギリス、フランス間に成立した海軍軍備制限に関するもの。これは、1930年のロンドン条約が5年間の暫定的なものとして成立したのを受けて、改めて軍備制限を問題としたものであるが、艦船の定義など実効のないものであった。

[斉藤 孝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロンドン条約」の意味・わかりやすい解説

ロンドン条約
ロンドンじょうやく
Treaty of London

ロンドンで締結された主要な条約。
(1) 1827年 ギリシアの自治を承認したイギリス,フランス,ロシア3ヵ国間の条約。 (2) 1831年 ベルギーの永世中立国としての地位を規定したイギリス,フランス,ロシア,オーストリア,プロシア5ヵ国とベルギーの条約。
(3) 1839年 ベルギー王国とルクセンブルク大公国の独立をオランダに正式に承認させた条約。 (4) 1840年 オスマン帝国とエジプトの関係をめぐるイギリス,ロシア,オーストリア,プロシア4ヵ国間の同盟条約。 (5) 1850年シュレースウィヒ=ホルシュタイン問題をめぐるイギリス,フランス,ロシア,デンマーク,スウェーデン5ヵ国間の条約。
(6) 1852年 デンマークの領土保全を保障するイギリス,フランス,ロシア,オーストリア,プロシア,スウェーデン6ヵ国間の条約。 (7) 1871年 イギリス,オーストリア=ハンガリー帝国,イタリア,北ドイツ連邦,トルコとロシアの間で黒海の中立化を解除した条約。同時に条約の効力に関するロンドン条約付属議定書を締結した。
(8) 1913年 第1次バルカン戦争の講和条約。

(9) 1914年 第1次世界大戦に際して,単独講和を結ばないことを相互に約するイギリス,フランス,ロシア3ヵ国間の条約。
(10) 1915年 第1次世界大戦中イタリア参戦の代償を同国に保障するイギリス,フランス,ロシア,イタリア4ヵ国間の秘密条約など。

(11) 1930年 アメリカ,イギリス,日本の3ヵ国間の海軍軍縮条約 (→ロンドン海軍軍備制限条約 ) 。

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百科事典マイペディア 「ロンドン条約」の意味・わかりやすい解説

ロンドン条約【ロンドンじょうやく】

ロンドンで締結された国際条約。(1)ライプチヒの戦の後,1814年英・オランダ間に締結され,英国はセイロン島,ケープ植民地等の領有を確定。(2)1827年,ギリシア解放戦争支持のため英・仏・露が締結。(3)1831年,英・仏・露等5ヵ国とベルギーの間で結ばれ,ベルギーの永世中立を保障。(4)1840年,英・露・プロイセン・オーストリア間に結ばれ,ムハンマド・アリーのエジプト等に対する統治権承認をオスマン帝国に強制。(5)1867年,英・仏・伊等8ヵ国間で結ばれ,ルクセンブルクの永世中立を規定。(6)1871年,英・仏・伊・露等6ヵ国間に結ばれ,1856年のパリ条約を改訂して黒海中立化を解除。ロシアは南下政策を強化。(7)1913年に結ばれたバルカン戦争(第1次)の講和条約で,オスマン帝国はヨーロッパ領土の大半とクレタ島を失った。
→関連項目桜会

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ロンドン条約」の解説

ロンドン条約(ロンドンじょうやく)

ロンドンで締結された条約は近代史上数多いので,主要なものをあげる。

①〔1827〕1827年7月,イギリス,フランス,ロシアの間に結ばれた,ギリシアの独立戦争支持に関するもの。

②〔1831〕1831年10月,イギリス,フランス,ロシア,プロイセン,オーストリアとベルギーの間に結ばれた,ベルギーの永世中立国としての地位を規定したもの。

③〔1840〕1840年7月,エジプトのムハンマド・アリーを牽制するため,イギリス,ロシア,プロイセン,オーストリアの間に結ばれた同盟条約。

④〔1867〕1867年5月締結されたルクセンブルクの永世中立国としての地位を規定したもの。

⑤〔1871〕1871年3月,イギリス,プロイセン,オーストリア,フランス,イタリア,ロシア,トルコの間に結ばれたロシアの黒海再武装化承認,ダーダネルス,ボスフォラス両海峡航行に関するもの。

⑥〔1913〕1913年5月結ばれた第1次バルカン戦争の講和条約。

⑦〔1915〕1915年4月,イギリス,フランス,ロシア,イタリアの間に結ばれた秘密条約。イタリアの参戦の代償として,ダルマツィア,南ティロルなどの領有を約束した。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ロンドン条約」の解説

ロンドン条約
ロンドンじょうやく

①1814年,イギリス・オランダ間に結ばれた条約
②1827年,イギリス・フランス・ロシア間に結ばれた条約
③1831年,イギリス・フランス・ロシア・オーストリア・プロイセンとベルギー間に結ばれた条約
④1840年,イギリス・ロシア・オーストリア・プロイセンが結んだ4国条約
⑤1913年に結ばれた第1次バルカン戦争の講和条約
⑥第一次世界大戦中の1915年,イギリス・フランス・ロシアとイタリア間に結ばれた秘密条約
ロンドンで結ばれた条約の総称。おもなものは次のとおり。
イギリスは喜望峰・セイロンなどを領有し,東インド諸島をオランダに返還した。
ギリシア独立戦争の際,イギリス・フランス・ロシアはギリシアの半主権的地位を認めた。オスマン帝国はこれを拒否。
ベルギーの独立と永世中立を規定。
第2回エジプト−トルコ戦争の処理のための条約で,外国軍艦のダーダネルス・ボスポラス海峡の通航を禁止した。翌1841年にはフランスも加わり,五国海峡協定を締結した。
トルコはバルカン半島の領土の大半を失った。
これにより,イタリアは,三国同盟を脱退し,三国協商側について参戦することになり,その代償として,イタリアに“未回収のイタリア”を与えることを約した。

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世界大百科事典(旧版)内のロンドン条約の言及

【海洋汚染】より

…また油汚染の調査については,ユネスコに属する政府間海洋委員会と世界気象機構によって計画が採択され,75年から関係各国で調査が始められた(日本では海上保安庁と気象庁が実施)。油のほか廃棄物などを含めた海洋投棄の規制に関しては,72年ロンドンで締結された〈廃棄物その他の物質の投棄による海洋汚染の防止に関する条約〉(通称ロンドン条約)があり,投棄を禁止する物質として,(1)有機ハロゲン化合物,(2)水銀および水銀化合物,(3)カドミウムおよびカドミウム化合物,(4)耐久性プラスチック,その他の耐久性の合成物質(例えば網,綱)であって,漁業,航行その他の適性な海洋の利用を著しく妨げるような状態で,海上または海中に浮遊するもの,(5)投棄の目的で積載された原油,重油,重ディーゼル油,潤滑油および作動油ならびにこれらの中のいずれかを含有する混合物,(6)高レベル放射性廃棄物(高レベルの定義については,国際原子力機関に委託),(7)形態のいかんを問わず,生物戦用および化学戦用に生産される物質を,また,投棄にあたって特別の措置を必要とするものとして,ヒ素,鉛,銅,亜鉛およびこれらの物質の化合物,有機ケイ素化合物,シアン化合物,フッ化物,駆除剤およびその副産物をあげており,低レベル放射性廃棄物の投棄は,国際原子力機関の勧告を十分に考慮するとされている。 日本の国内法としては,船および海洋施設からの油および廃棄物の海洋への排出を規制した〈海洋汚染防止法〉,陸上施設からの排出による水質汚濁防止を目的とした〈水質汚濁防止法〉が制定されている。…

※「ロンドン条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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