ロマンティック・バレエ(読み)ロマンティックバレエ

百科事典マイペディア 「ロマンティック・バレエ」の意味・わかりやすい解説

ロマンティック・バレエ

19世紀初頭,ロマン主義の影響下に開花したバレエ史における一時期,またその時代のバレエ作品をいう。狭義には1830年−1850年,前史とその後の広範な影響を含めて1820年−1870年とする定義もある。妖精などを主人公に幻想の世界を描く作品のほか,エグゾティシズム重きをおく作品が誕生した。またポアント技法が磨かれ,女性ダンサーがチュチュ姿で踊るなど,今日に至るバレエ様式の基本はこの時期に完成されている。代表作に《ラ・シルフィード》と《ジゼル》があり,タリオーニエルスラーグリジらの女性舞踊家が一世を風靡(ふうび)した。その隆盛には作家ゴーティエの評論活動の力も大きい。なお,ロマンティック・バレエはその衰退とともに誕生時の振付は失われ,今日ではデンマークの振付家ブルノンビルの作品にその様式を見ることができる。
→関連項目アダンデンマーク王立バレエ団ドーリンバレエペローレ・シルフィード

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知恵蔵 「ロマンティック・バレエ」の解説

ロマンティック・バレエ

「ロマンティックなバレエ」という意味ではなく、ロマン主義時代のバレエという意味で、1830〜40年代に隆盛を極めた。重要なのは、この時代に、現在私たちが見ているようなバレエの様式が確立されたということである。女性ダンサーが爪先で立って踊るという技法も、この時代に普及した。妖精、魔女といった超自然をテーマとし、女性が舞台中心を占める。多くの作品が作られたが、現在でも上演されるのは「ラ・シルフィード」(1832年)、「ジゼル」(41年)の2作品にすぎない。ナポレオン3世時代に作られた「コッペリア」(70年)などを「第二帝政期バレエ」あるいは「後期ロマンティック・バレエ」と呼ぶこともある。

(鈴木晶 舞踊評論家 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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