ロバートソン(英語表記)Dennis Holme Robertson

改訂新版 世界大百科事典 「ロバートソン」の意味・わかりやすい解説

ロバートソン
Dennis Holme Robertson
生没年:1890-1963

イギリスの経済学者。ケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジで初めは古典学を学んだが,後に経済学に転じ,A.マーシャルの教えを受けた。J.M.ケインズは彼の7年年長の先輩であった。1944年から57年にかけて,マーシャルやA.C.ピグーの後を継いでケンブリッジ大学正教授の地位にあった。専門貨幣論,景気循環論であるが,景気循環動因としては発明や投資等の実物的要因を強調した。投資と貯蓄のバランスと銀行部門の役割を論じた《銀行政策と価格水準》(1926)は,ケインズの《一般理論》にも影響を与えた。ただし,1936年にケインズの《一般理論》が刊行されてからは,ケインズの貯蓄投資の均衡概念に対して期間分析の観点から批判を加え,流動性選好説に対しては貸付資金説の有効性を主張した。主著には,《産業循環の研究》(1915),《経済原論講義》全3巻(1957-58),《貨幣》(1922)等がある。古典学の素養にも助けられて,格調の高いしかもユーモアにみちた名文家としても知られる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロバートソン」の意味・わかりやすい解説

ロバートソン
Robertson, Oscar

[生]1938.11.24. テネシー,シャーロット
アメリカ合衆国のバスケットボール選手。本名 Oscar Palmer Robertson。大学とプロを通じて活躍したバスケットボール史上に残るトップ選手の一人。インディアナ州インディアナポリスで少年時代を送り,クリスパス・アタックス高校のバスケットボールチームを2回にわたり州大会優勝に導いた。 1956年スポーツ奨学金を得てシンシナティ大学に入学,同大学バスケットボールチーム初のアフリカ系アメリカ人選手となった。 1960年のローマ・オリンピック競技大会ではアメリカ代表チームの一員として金メダルを獲得した。 1960年NBAのシンシナティ・ロイヤルズに入団し,そのシーズンの最優秀新人賞を受賞。 1961-62年シーズンには1試合平均 30.8得点,12.5リバウンド,11.4アシストの年間トリプルダブル (3部門の数字がすべてふた桁) の偉業を達成した。 1970年ミルウォーキー・バックスに移籍し,チームを同シーズン優勝に導いた。 1974年の現役引退までにリーグのアシスト王に6度輝いた。通算成績は2万 6710得点 (1試合平均 25.7) ,7804リバウンド (同 7.5) ,9887アシスト。 1979年にネイスミス記念バスケットボール殿堂入りを果たした。

ロバートソン
Robertson, Sir Dennis Holme

[生]1890.10.23. ノーフォーク,ローウェストフト
[没]1963.4.21. ケンブリッジ
イギリスの経済学者。 A.C.ピグー,J.M.ケインズと並ぶケンブリッジ学派巨匠。ケンブリッジ大学に学び,1930年同大学講師,39~44年ロンドン大学教授,44年ケンブリッジ大学正教授 (1957名誉教授) ,王立経済学会会長などを歴任。 25歳で英語圏における正統派アカデミックな経済学者による最初の景気循環論の研究書『産業変動の研究』A Study of Industrial Fluctuation (15) を著わし,その地位を確立。貨幣理論,景気変動理論,完全雇用からの乖離の問題について,ケンブリッジ学派特有の冷徹な目と,熱烈な政策意識で多大の成果をあげた。またその経過分析と呼ばれる手法が『貨幣論』を執筆していた頃のケインズに与えた影響は大きく,両者はその後理論的立場は離れていくが,終生ケインズの議論の相手であり続けた。著書は上記のほか,『貨幣論』 Money (22) ,『銀行政策と価格水準』 Banking Policy and the Price Level (26) ,『経済原論講義』 Lectures on Economic Principles (3巻,57~58) など。

ロバートソン
Robertson, William

[生]1721.9.19. ミッドロージアン
[没]1793.6.11. エディンバラ
スコットランドの歴史家,長老教会派の聖職者。『スコットランド史 1542~1603』 History of Scotland during the Reigns of Queen Mary and of King James VI till his Accession to the Crown of England (2巻,1759) を公にして称賛を博し,エディンバラ大学学長 (62~92) ,スコットランド歴史編修官 (63) に任じられた。著書として『皇帝チャールズ5世時代史』 The History of the Reign of the Emperor Charles V (69) ,スペイン領アメリカの歴史を描き,文化人類学の発展に大きな影響を与えた名著『アメリカの歴史』 History of America (2巻,77) などがある。

ロバートソン
Robertson, Sir Howard Morley

[生]1888.8.16. ソルトレークシティー
[没]1963
アメリカ生れのイギリスの建築家,建築理論家。 1905年にヨーロッパに渡り,パリのエコール・デ・ボザールで学んだのち,09年に J.イーストンと共同でロンドンに建築事務所を開いた。また建築理論家として知られ,多くの著書を残した。 52~54年 RIBA (イギリス王立建築家協会) 会長。主作品はウェストミンスターの造園協会展示館 (1928) ,ブリュッセル万国博覧会のイギリス館 (35) ,主著『建築構造の原理』 Principles of Architectural Composition (24) ,『現代の建築デザイン』 Modern Architectural Design (32) 。

ロバートソン
Robertson, Thomas William

[生]1829.1.9. ノッティンガムシャー,ニューアーク
[没]1871.2.3. ロンドン
イギリスの劇作家。俳優となり,のち劇作に転じ,『社会』 Society (1865) ,『階級』 Caste (67) など,リアリスティックな社会劇によって名声を確立,イギリス近代劇の祖と仰がれる。

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百科事典マイペディア 「ロバートソン」の意味・わかりやすい解説

ロバートソン

英国の経済学者。ロンドン大学教授を経てケンブリッジ大学教授。王立経済学協会会長。ピグー,ケインズと並ぶケンブリッジ学派(新古典派)の代表者。専門は貨幣論で,英国経済学者初の景気変動論として《産業循環の研究》(1915年)が有名。さらに貨幣的側面の分析《銀行政策と価格水準》(1926年)で著名。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「ロバートソン」の解説

ロバートソン Robertson, Horace

1894-1960 オーストラリアの軍人。
1894年10月29日生まれ。昭和21年2代日本占領英連邦軍総司令官として来日。ノースコットのあとをうけて,中国・四国地方駐留の英連邦軍を指揮した。1960年4月28日死去。65歳。イギリスの陸軍大学校卒。

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367日誕生日大事典 「ロバートソン」の解説

ロバートソン

生年月日:1890年10月23日
イギリスの経済学者
1963年没

ロバートソン

生年月日:1829年1月9日
イギリスの劇作家
1871年没

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世界大百科事典(旧版)内のロバートソンの言及

【貸付資金説】より

…自然利子率よりも市場利子率が低いときには,その国民経済は絶えざるインフレーションに陥ってしまうというのである。このような貸付資金説はウィクセルをはじめとするスウェーデン学派やD.H.ロバートソンらによって主張されたもので,一定期間における資金のフローの需給によって利子率が決定されるという理論である。これに対して,ある時点で存在する金融資産の残高(ストック)を経済主体がちょうど過不足なくもつように利子率,したがって債券価格が決まると主張したのがケインズによる流動性選好理論である。…

【ケンブリッジ学派】より

…ピグーが経済的厚生増大のための生産,分配,安定に関する三つの命題を掲げたことに示されるように,本書は全体として〈光より果実を求める〉ケンブリッジ学派の実践的性格を反映したものであった。このうち第三命題は後に《産業変動論》(1927)へと発展させられたが,景気変動論はむしろ,彼の後継者D.H.ロバートソンの《産業変動の研究》(1915),《銀行政策と価格水準》(1926)などを通じて早くから展開されていた。 イギリス経済は,その後29年の大恐慌後の不況期に多量の失業者と遊休設備に悩まされるようになったが,そのなかでJ.M.ケインズの《雇用・利子および貨幣の一般理論》(1936)が出版され,〈供給は需要をつくりだす〉という〈セーの法則〉に立って完全雇用のもとでの資源配分を取り扱ってきた従来の経済学に批判を加え,いわゆる〈ケインズ革命〉をひき起こすことになった。…

【タイム・ラグ】より

…経済学において,タイム・ラグとは,ある経済現象が起こったとき,それに対する反応が直ちに起こらず,ある時間を置いてから起こることをいう。タイム・ラグの重要な例としては,(1)D.H.ロバートソンが強調した消費ラグ(家計は所得が増加したとき,すぐには消費を増加させず,一定の時間がたってから増加させる),(2)E.ルンドバーグやL.A.メツラーが強調した生産のラグ(販売量の増加に対して,企業は当座は在庫を減らすことによって対処し,生産の増加はしばらくたってから行う),(3)投資計画と投資の実行の間のラグ(投資計画を立て機械等を発注しても,すぐには機械等の受渡しは行われないため,投資計画とその実現の間にはラグがある),等があげられる。 経済学においてタイム・ラグが重要視される理由は,タイム・ラグを含んだ動学方程式によって,静学理論の均衡へ実際に経済が到達する経路を記述することができるからであり,またタイム・ラグを仮定することで,静学的な理論では説明できない経済変数の循環的な動きや,オーバーシューティングといった現象を説明できるからである。…

※「ロバートソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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