ロバートソン(Dennis Holme Robertson)(読み)ろばーとそん(英語表記)Dennis Holme Robertson

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ロバートソン(Dennis Holme Robertson)
ろばーとそん
Dennis Holme Robertson
(1890―1963)

イギリスの経済学者。ケンブリッジ大学で学び、同大学講師(1930~38)、ロンドン大学教授(1939~44)を経て、1944年A・C・ピグーの後を受けて、ケンブリッジ大学第3代経済学教授(~1957。彼まではケンブリッジ大学の経済学教授は一時には1人のみ)。また、48~50年王立経済学会会長をはじめとして、重要な役職歴任ロバートソンの研究分野は多方面にわたるが、とくに景気変動論、貨幣論面で著名で、処女作『産業的変動の研究』A Study of Industrial Fluctuation(1915)はイギリスのアカデミックな研究者によって著されたこの分野の最初の研究書として歴史的な意義をもっている。同書が実物的分析を中心にしていたのに対して、26年の『銀行政策と価格水準』Banking Policy and Price Level(邦訳2種あり)では貨幣面の強調貯蓄と投資の関係からの景気変動の説明、期間分析手法の導入、期待の重要視、などの点で、『貨幣論』(1930)のJ・M・ケインズにも大きな影響を与えたが、『一般理論』ではケインズに同調せず、A・マーシャルの伝統を色濃く伝えた最晩年の講義録『経済原論講義』Lectures on Economic Principles全3巻(1957~59)を残した。ほかにも著書・論文多数。名文家としても著名。

[早坂 忠]

『豊崎稔訳『貨幣政策と物価』(1936・大同書院)』『高田博訳『銀行政策と価格水準』(1958・巌松堂)』『森川太郎・高木昇訳『経済原論講義』全3巻(1960~62・東洋経済新報社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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