レービ(英語表記)Primo Levi

改訂新版 世界大百科事典 「レービ」の意味・わかりやすい解説

レービ
Primo Levi
生没年:1919-87

イタリア作家詩人トリノユダヤ人家系に生まれ,トリノ大学化学を学ぶ。1943年レジスタンス活動中に捕らえられ,アウシュビッツ強制収容所に送られるが,奇跡的に生還する。この体験は《アウシュビッツは終わらない》(1947)で,抑えた筆致でリアルに描かれ,記録文学として高い評価を受けた。しかし《ひどく自然な物語》(1969),《形の病》(1971)では作風が一変し,SF的な手法で現代文明の病がグロテスクに拡大され,風刺されている。75年の《周期律》以降,再度リアルな作風に戻ったが,強制収容所で得た人間存在への深い洞察は,どの時期の作品にも一貫してみられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レービ」の意味・わかりやすい解説

レービ
Levi, Primo

[生]1919. トリノ
[没]1987.4.12. トリノ
イタリアの小説家。アウシュウィッツ強制収容所での過酷な体験と祖国への困難な帰還の旅を扱った『これが人間であるならば』 Se questo è unuomo (1947) および『休戦』 La tregua (63) は,第2次世界大戦後の最良の記録文学といわれる。また,Damiano Malabailaの名で出版した『博物誌』 Storie naturali (66) ,『悪癖の形』 Vizio di forma (71) ,『今がその時』 Se non ora,quando? (82) がある。

レービ
Levi, Carlo

[生]1902.11.29. トリノ
[没]1975.1.4. ローマ
イタリアの小説家。初め医学を志したが,のち絵画と文学に専念。 1935~36年ファシスト政権によってルカニアに流刑された。この経験を扱った長編小説キリストはエボリに止まりぬ』 Cristo si è fermato a Eboli (1945) は 20ヵ国語に翻訳され,レジスタンス文学の白眉といわれた。ほかに『自由の恐怖』 Paura della libertà (46) ,『時計』L'orologio (50) など。

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世界大百科事典(旧版)内のレービの言及

【ネオレアリズモ】より

…また,詩人としては,59年度ノーベル賞を受賞したクアジモドフォルティーニなどの名を逃すわけにはいかない。一方,最初に述べたように,反ファシズム闘争の題材を中心に考えた場合には,モラビアやベルナーリと並んでアルバーロやレーアDomenico Rea(1921‐ )が,あるいはモランテP.レービが,あるいはまたバッサーニ,ランドルフィ,パゾリーニらの名前もネオレアリズモの列に加えられることになろう。 第2次大戦後の日本における現代イタリア文学の翻訳・紹介は,戦前・戦中におけるデレッダやピランデロ(両者とも1926年と1934年にノーベル文学賞を受賞)の場合と様変りして,モラビア,ベルト,C.レービ,シローネ,あるいは反ファシズム闘争の記録類が,ネオレアリズモの漠然とした標語のもとになされた。…

【ピエモンテ[州]】より

… 1933年に創設されたエイナウディ社は,反ファシズム思想の砦になるとともに,第2次大戦中から戦後にかけて,トリノを新しい文化の中心地とするのに主導的役割を果たした。サント・ステーファノ・ベルボ生れのC.パベーゼ(反ファシズム活動の理由によって1935‐36年は南イタリアに流刑),トリノ生れの画家・医者で《キリストはエボリに止まりぬ》(1945)を著したレービ(1935‐36年は南イタリアに流刑),獄死したロシア文学者ギンズブルグLeone Ginzburg(1909‐44),その妻ナターリア・ギンズブルグ,またレジスタンスに参加した最後の世代I.カルビーノは,エイナウディ社の編集活動に直接加わった。この結果,戦後エイナウディ社から,B.フェノリオ,G.アルピーノ,P.レービら,多彩な人材が世に送り出された。…

【メッツォジョルノ】より

… その後グラムシはクローチェを批判しつつ,知識層の文化とともに民俗文化にも関心を注ぎ,民俗文化のなかに南部民衆の世界観および生活観を読み取ることの重要さを唱えた。一方,1930年代の反ファシズム活動でルカニア州の寒村に流刑となったP.レービは,そのときの経験を《キリストはエボリに止まりぬ》(1945)と題して発表した。レービは南イタリアの農民の間に根を下ろしている呪術的性格の濃い慣行と信仰に最初とまどいながらも,それを遅れの問題としてでなく,日常生活の営みと結びついた固有の文化要素としてとらえ直し,それまでの南部論に欠けていた南部社会の内側からの記録を提出した。…

※「レービ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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