レース(英語表記)lace

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精選版 日本国語大辞典 「レース」の意味・読み・例文・類語

レース

〘名〙 (lace) 糸をより合わせたりかがったりして種々の透かし模様を作り布状にしたもの。かぎ針や糸巻きを使って編む手編みレースと、カーテン地などの機械レースとがある。広義には、透かし模様のある布地。《季・夏》
米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「窓には線(レース)の幔〈『レース』は紗の如く花紋を組織せる布なり〉を掛け」

レース

〘名〙 (race) 競走すること。特に、スポーツ競技の競走、競泳、競漕、競馬、競輪など。
※当世少年気質(1892)〈巖谷小波〉三「みんな今競走(レース)をして居るぜ」
※競馬(1946)〈織田作之助〉「こんな日は競走(レース)が荒れて大穴が出る」

レース

〘名〙 (lathe) 旋盤。

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デジタル大辞泉 「レース」の意味・読み・例文・類語

レース(race)

陸上・水上などでゴールをめざして争うこと。競走・競泳・競漕などの競技。「中距離レース」「オートレース
一般に、競争。「ペナントレース」「頭取レース
[類語]競走競歩徒競走障害物競走駅伝競走耐久競走長距離競争持久走継走リレーレースメドレーリレーマラソンかけくらべかけっこ

レース(lace)

糸で網目状の透かし模様を編み、布状にしたもの。また、布地に刺繍ししゅうなどで透かし模様を施したもの。 夏》

レース(lathe)

旋盤。「ウッドレース

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改訂新版 世界大百科事典 「レース」の意味・わかりやすい解説

レース
lace

衣服や衣服の装飾,アクセサリー,カーテンやテーブル掛けなどの部屋飾りに用いられる透し模様のある布。俗ラテン語のラキウムlacium(〈結んでできる輪〉の意)を語源とし,1本または何本かの糸を,かがる,からげる,編む,結ぶ,より合わせる,組み合わせるなどして透し模様にしたものをいう。しかし広義には,はじめに布があってその布の一部を切り取る,織り糸を引きしぼる,あるいは抜き取ってかがるなどして透し模様にしたもの,また網状の布(ネットやチュールなど)に模様を刺繡してレース状に加工したものもレースの名で呼ばれる。

 狭義の,糸をからげるなどして作るレースには,ボビンbobbin(糸巻)を先端につけた糸を台(ピロウpillow(枕の意))上にピンで留めながらレースをつくっていくボビン・レースbobbin lace(ピロウ・レースpillow laceともいう)や,下絵の輪郭線に糸を止めつけてフレームを作り,内部を縫針(ニードルneedle)で糸を浮かしながらかがるニードル・ポイント・レースneedle point laceがある。このほかに,小さなシャトル(杼(ひ))に巻いた糸で結び目をつくりながら編むタッチング・レースtatting lace,網針と定規を使って漁網を編む要領でつくるフィレ・レースfilet lace,U字形の器具と鉤(かぎ)針で編むヘアピン・レースhairpin lace,円形のクッションに虫ピンをさし,これに糸を渡してかがって作るテネリーフ・レースtenerife lace(カナリア諸島中のテネリフェ島で始められたもの),鉤針で編むクロッシェ・レースcrochet lace,棒針で編むニッティング・レースknitting lace,器具を使わずに結ぶマクラメなどがある。

 布でつくるレースには,先にほつれ止めのステッチをしてから布の一部を切り取るカット・ワーク,布目を糸で引き絞って孔をあけるドローン・ファブリック・ワーク(オープン・ワークともいう),経糸や緯糸を一部引き抜いてかがるドローン・ワークが含まれる。またチュールやネットに刺繡するチュール・エンブロイダリーやネット・ワークの方法もある。

先史時代から漁網や,布,ひもなどの端のほつれを結んで作った房など,現在のレースのもとになる技術が行われていたが,レースが装飾として独立して作られるようになったのは15世紀末から16世紀初頭にかけてのイタリアである。

初期のレースと思われるものには,前1600~前1500年ころの古代エジプトの図柄の一部をドローン・ワークしたものや,前1300~前1000年ころのチュートン人の女性のヘア・ネットがみられる。古代ギリシア・ローマでは,色糸や金糸の模様レースでトガやペプルムを飾った。またイタリアの古代ローマ遺跡からボビンと思われる器具が発掘されている。紀元1世紀ころにはコプトの頭巾があり,200~500年ころのコプトの墓からはボビンといっしょにレースが発掘されている。

当時,修道院の尼僧たちは,ドローン・ワークやカット・ワークなどを日課の手仕事にしていたところからナンズ・ワークnun's work(尼僧の手芸品)と呼ばれていた。レースの語は尼僧院から誕生したらしく,13世紀イギリスの女子修道院規約の記述に使われている。当時のパリではパスマンpassement(飾りひも,房飾り)の商売が盛んに行われ,14世紀のイタリアのジェノバでも白亜麻糸のブレードが装飾用に使われた記録がある。また,フランドル地方では,白亜麻糸をボビンを使ってブレードに編む技術が始められた。15世紀中ごろにはピロウが発明され,ジェノバでは,ピロウの上に下絵を描いた羊皮紙または厚紙をのせ,その上にピンを打ちながら編むプレーテッド・レースplaited laceが作られるようになった。これはボビン・レース(ピロウ・レース)の最も初歩的なものである。また当時のドイツの修道院ではネット地に白亜麻糸でからみ刺繡したダーンド・ネッティングdarned nettingをカット・ワークに用いた。このレースは仕上がりが非常にニードル・ポイント・レースに似ていた。

16世紀の中ごろ,ベネチアで考案されたニードル・ポイント・レースは,レティチェラreticellaと呼ばれ,布地がほとんど見えないぐらい糸でかがった幾何学模様の孔あき刺繡であるが,やがて本格的なプント・イン・アリアpunto in aria(〈空中に刺したレース〉の意)に発展した。この技法は,織りの粗い麻地の上に,下絵を描いた羊皮紙をとめ,輪郭を粗く縫ってフレームを作り,その糸をたどりながらブランケット・ステッチを浮かしながらからげていき,羊皮紙を切ってはずすと糸だけで模様を構成するレースで,デザインは単純な幾何学模様の縁飾りから,やがて唐草・花鳥・風俗模様の幅広いボーダーになり,さらに,動物・花鳥模様へと変化していった。当時イタリア製のレースは国外でも注目され,ベネチアン・レースVenetian laceとしてイギリス,フランス,スペイン,ドイツなどへベネチアの商人によって持ち込まれた。イギリスではヘンリー8世の財産目録中にベネチアン・レースの語がみられる。エリザベス1世もイタリア製のレースの衿を好んで用い,レースは王侯以外の使用は禁止された。フランスでは1533年アンリ2世と結婚したフィレンツェのカトリーヌ・ド・メディシスによってイタリアのレースが紹介され,さらに姪のマリー・ド・メディシスがアンリ4世と結婚するにおよんで,レースの需要はいっそう高まり,レースの購入費が海外へ流出するのを防ぐため,王侯・貴族以外は使用を禁止するほどであった。需要を満たすため,刺繡工をレース工に転職させ,家庭内で趣味に作っていたものをも商品化し,修道院もレース作りに参加した。また初心者でも簡単にできるレースの作り方が考案され,パターン・ブックなども出版され,多くの人々にレース作りが普及した。

 17世紀の中ごろには,プント・イン・アリアはグロ・ポアン・ド・ブニーズgros point de Venise(ベネチアの大模様レース)とフランスで呼ばれる重厚な立体感のあるレースへと発展した。デザインは,アカンサス風の葉,バラのような花,ザクロ風の模様などで,何段にも凹凸があり,低い部分には透し目模様を入れ,輪郭は巻きぬいを重ねて高く盛り上げ,それらをつなぎ合わせてある。やがてレースは洗練された柔らかな雰囲気の小柄模様に変化し,繊細なローズ・ポアンrose pointあるいはポアン・ディボアールpoint d'ivoire(象牙細工のようなレース)などの名をもつレースが作られ,いっそう高価なものになった。

 当時フランスでは,イタリア製レースの人気に対抗して国内での生産が計画され,ルイ14世の宰相コルベールが,スダン(セダン)に王立レース製造所を創設し,やがて,ポアン・ド・スダン(セダン)point de Sedanと呼ぶフランス製レース(ポアン・ド・フランスpoint de France)が考案された。コルベールはさらに,アランソンにフランドルやベネチアからレース工を招き,専門デザイナーの下絵をもとにして工夫を重ね,1670年代にはヨーロッパ各地の羨望の的になるいわゆるアランソン・レースAlençon laceを作り上げた。このレースのデザインは,ロータス・パルメット,松かさ,カーネーション,アカンサス風の大きな葉などで,模様の輪郭には,糸,馬の毛,人の髪の毛などを芯にしてブランケット・ステッチでかがったコルドネcordonnet(細いひも)をつけて浮き上がらせ,つなぎには六角形の規則正しいメッシュを使ったみごとなレースである。

 一方,ボビン・レースは,16世紀の中ごろには初歩的なプレーテッド・レースがフランス,ベルギーなど各地へ広まった。1559年にはベルギーのブラバント公夫妻の結婚記念に作られたベッド・カバー(縦171cm,横130cm)がある。その後ベルギーを中心にして技術は急速に進歩し,1625年ころには幾何学模様の柔らかい縁レースが作られ,17世紀中ごろ以降は唐草・花・動物模様のテープ・レースが作られた。17世紀はとくにイタリア,フランスの技術が急速に発展しバロック・レースとして全盛期を迎えた。また当時アフリカ北西海岸沖のカナリア諸島のテネリフェ島で,円形のモティーフをつないだテネリーフ・レースが作りはじめられた。

 18世紀の中ごろからはフランスのポアン・ド・フランスの名称もすたれ,生産地の名称に変わり,アランソン・レース,アルジャンタン・レースArgentan laceなどが盛んに作られるようになった。アランソン・レースは洗濯にも耐え,丈夫なもので〈レースの女王the queen of lace〉とも呼ばれ,広いメッシュ地に,ユリの紋章,水玉,ロゼット,蜂などを全面に散らし,立体感のある優雅な花柄を配し,その輪郭には馬の毛を芯に入れてブランケット・ステッチで刺してあり,アルジャンタン・レースはアランソン・レースに類似した,より上質で高価なものであった。当時のイタリアでは,ポアン・ド・ブニーズ・ア・レゾーpoint de Venise à réseau(網目地ベネチアン・レース)と呼ぶ,メッシュ地に平坦に編んだ花柄を散らしたものがあるが,アランソン・レースの模倣,またはボビン・レースの軽やかさを出そうとしたものとされている。また,当時のベルギーのブリュッセルではボビン・レース,ニードル・ポイント・レースのどちらでもポアン・ド・アングレーテルpoint de Angleterre(イギリスのレース)と称し,繊細で透明度の高い安価なレースが作られ,フランスやイギリスなどで人気を呼び,ついにはポアン・ド・ガーズpoint de gaze(薄布のレース)という薄いしなやかなものが作られた。18世紀のレースはロココ・レースともいわれ,とくにベルギーのレースはヨーロッパ各地に輸出され人気を呼んだ。しかし,やがてイギリスの産業革命,フランス革命などの影響により,レースの需要は絶え,生産も停滞し,デザインや技術は低下していった。

19世紀の中ごろからは,レースの種類や部分など,専門に分かれて製作されるようになり,それらを組み合わせたボビン・アンド・ニードル・ポイント・レース,ネット地にモティーフをアップリケしたアップリケーション・レースなどが作られた。デザインは庭園,野原に咲く花,古代ギリシアやローマの神話をテーマにしたものなどがある。当時イギリスではホニトン・レースHoniton laceが作られた。その他,アイルランド近海のエメラルド島ではタッチング・レースが作りはじめられた。

 1589年にイギリス人のW.リーが靴下編機を発明し,さらに1758年にはJ.ストラット(1726-97)が靴下の縁飾りや透間模様の製法を考案したことから,機械レースの研究が盛んになり,1802年には漁網用編機が,1808-09年にはJ.ヘスコート(1783-1861)の考案によりボビン・ネット・マシンが,13年にはJ.リーバースによって現在の原型になったボビン・レース用のリーバース・マシンが発明され,さらに,34年にはリーバース・マシンにジャカードの原理が取り入れられ複雑な模様レースが作られた。また,1818年にはパリとマサチューセッツに最初の機械レース工場が創設されて機械レースの産業が盛んになった。

 日本へは1920年代にレース機械が輸入され,国内各地で生産されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レース」の意味・わかりやすい解説

レース
れーす
lace

糸を操作することによって透かし模様をつくりだしたもの。その技術とくふうによって模様は複雑、多様になる。また布地に透かし模様でつくった刺しゅうもレースとよぶ。

[田村彰三]

歴史

エジプトやインカの遺跡から、糸を巻いたボビン(糸巻)や精巧なレース織が発見され、欧州各地からスプラング(渡した糸をねじってつくるレース)が発掘されている事実から、古い伝統と歴史をもっていることがわかる。15世紀ごろには修道院の尼僧の日課としてつくられ、繊細で華麗なレース類が考えられた。網地をつくり模様の箇所を埋めるフィレ・レース、ドロンワーク、カットワークなどが生まれたのもこのころである。16世紀ごろになると、豪華な刺しゅうから清楚(せいそ)な衣装へと関心が変わり、布地を四角や丸角に切り取って糸を渡してかがる「レチセラ」、さらに布地に制約されない「プントインアリア」から、ニードルポイント・レースへと発展した。

 フランスのルイ王朝では、豪華なレースが宮廷衣装として不可欠のものとなり、男性もレースを使用するなど、大量のものが要求され、各地で独得のレースがレース職人によってつくられた。また、婦人のたしなみとしてレース作りが広まり、現在のレースの諸技法はこのころに確立されたといっていい。やがてフランス革命が起こり、レースの需要は激減してレース職人は失業するが、手作りのレースは婦人の趣味として続けられた。

[田村彰三]

日本のレース

わが国のレースは奈良時代ごろから羅(ら)、絽(ろ)、紗(しゃ)などの織物類が装束や着尺としてつくられ、寺院の飾り結び、馬具の七宝結びなど、わずかに使用されている。

 現在のいわゆるレース類は、明治の文明開化に伴い外国から伝来したもので、鹿鳴館(ろくめいかん)時代の欧風衣服の使用、洋服の普及とともに、レース編みは婦人の教養として普及した。糸、羊毛などの輸入とともに技術書も輸入され、日本人好みの繊細さが、やがて手内職として全国的に普及、レースを逆に輸出するまでになった。第二次世界大戦後、衣服としての編物、レースが必要となり、新しい糸、素材の開発に伴い、それにあわせた各技法のレースが流行するようになっている。

[田村彰三]

レースの種類

ニードルポイント・レース

縫針を使うもので、厚手の紙または固めの布に模様を描き、輪郭線に糸を沿わせて別糸で留める。その糸を土台にして、模様の空間を種々のかがりで埋める。模様の間や縁との間に糸を渡し、その糸を芯(しん)にしてかがってつないだり(ブリッジ)、地埋めかがりで埋めて(グランド)から、模様の輪郭に別糸をのせ、ボタンホールステッチをして立体的にし、最後に紙または布にとじつけた別糸を切り離して仕上げる。

[田村彰三]

バテン・レース

厚手の紙に描いた模様にあわせて、機械製のブレード(幅0.5~1.0センチ)をとじつけ、ブレードの合わせ目をつなぎ、模様の空間をかがって埋め、とじつけた糸を切って土台からはずして仕上げる。

[田村彰三]

ボビン・レース

糸を交差させたり、組み合わせてつくるレースで、糸をボビンに巻いて操作するのでボビン・レースといわれ、また台(ピロー)にピンで留めながらつくるので、ピロー・レースともいわれる。たくさんの糸を使う場合でも、操作する糸は4本を単位にする。動作は渡す(クロス)、ねじる(ツイスト)の二つだけだが、ピンの打ち方、進め方で形や模様がつくられる。

[田村彰三]

マクラメ・レース

糸を指先で結び合わせてつくる。1本の糸を芯糸にして2回ずつ結ぶ巻き結び(横巻き結び、斜め巻き結び)、2本の糸を交互に芯糸にして結ぶくさり結び、4本の糸の2本を芯糸にして残り2本で交互に結ぶ平結びなどが基本で、その応用や素材の変化、色彩などによって平面のもの、立体のものなどがある。

[田村彰三]

タッチング・レース

長さ6~7センチメートルの舟型の板をあわせたシャトル(シャットル)に糸を巻き、指先で糸をくぐらせてシャトルの糸を芯糸にした結び目を連続させてつくる。シャトルの糸を輪にして結ぶリング編と、別糸を使って結ぶ2本どり編(ブリッジ編)があり、それを組み合わせて模様をつくる。

[田村彰三]

フィレ・レース

網針に糸を巻き、目板(ループの大きさを計る板)に糸を巻いて、前段ループに結び目をつくる。目数の増減、ループの大きさなどで模様や形をつくる。また、つくった網を土台にして、刺しゅうで模様を入れる。

[田村彰三]

テネリフ・レース

円形、四角形などに糸を渡しておき、その糸を土台にして別糸で結んだりかがったりして模様をつくる。

〔1〕ニッティング・レース(棒針編みレース) 棒針で連続したループを編成し、他の棒針でそれぞれのループから新しく糸のループを引き出して、段を重ねて編み地を形成する。前段のループからいくつかのループも引き出す「増目」、前段の数ループを、一つのループにまとめてつくる「減目」、新しくループを作る「かけ目」などによって、透けた模様をつくる。

〔2〕クンスト・ストリッケン・レース ドイツ語で芸術編みのことで、ドイツをはじめヨーロッパ各地でつくられた。昔は細糸で、おもに中心から外側に向けて増減目、かけ目などで、花模様、幾何模様が編まれた。

〔3〕クロッシェ・レース(かぎ針編みレース) 糸を輪の状態にしておき、かぎ針またはレース編みで次のループを引き出して、一目ずつ編成しながら編み地を形成する。鎖編み、細編み、中長編、長編のほか、いろいろの技法がある。それらを組み合わせた模様編み地、「方眼編み」「ネット編み」「パインアップル編み」「七宝編み」などがある。ほかにも、おもに中心から編み始め、つなぎあわせる「モチーフ編み」がある。

〔4〕ブリューゲル・レース かぎ針編みで、テープ状に編みながら、図柄にしたがって曲げたり、間をつないでつくる。ゆるやかなカーブがつくられるので、ボーゲン・レース(スキーのあと)ともいわれている。

〔5〕ヘアピン・レース 髪のピンを使ったので、この名称がある。一定の幅に棒を立て、糸を巻きつけながらその中心で編んで両側にループのあるテープができる。

〔6〕アイリッシュクロッシェ・レース イギリスのアイルランド地方でよくつくられていたので、この名前がある。バラ、ブドウ、クローバーなどの草花をモチーフにして、芯糸を入れて浮き上がるように立体的につくる。台布に、編んだモチーフと縁を裏返しにしてとじつけ、その間をピコット付きのネット編みなどで地埋めをして、台布から外してつくる。

〔7〕アフガン・レース 棒棒編みとかぎ針編みの両方の編み方を使う編み方で、棒針の先がかぎ針状になったアフガン針を使う。往きは棒針と同じようにループをつくり、後戻りでかぎ針と同じ一目ずつ目を形成しながら戻る。増減目かけ目によって、透かし模様をつくる。

[田村彰三]

チュール・レース

機械製の六角形のメッシュ(チュール)に刺しゅうしてつくるレース。網の目が三方向になるので、それを生かしてターニングステッチ、ボタンホールステッチ、バックステッチなどが使われる。

[田村彰三]

レース織

織機を使ってつくるレース。経(たて)糸をねじっておき、緯(よこ)糸を通してつくる。

[田村彰三]

機械レース

1589年、イギリスのウイリアム・リーの靴下編機、1808年同国ジョン・ヒスコートのボビンネット機、1828年スイスのパイルマンの刺しゅうレース機などが発明され、手作りレースに近い質感をもたせる模様レースが、動力機械によって量産されるようになった。現在では、ボビン・レース機による撚(より)組織のリバー・レース、チュール・レース、また組紐(くみひも)機によるトーション・レース、メリヤス機によるラッセル・レース、刺しゅう機による刺しゅうレースと、ビニロン生地(きじ)に刺しゅうしておき、あとで生地を溶解して刺しゅう糸だけを残すケミカル・レースなどがつくられる。

[田村彰三]

『日本繊維意匠センター編・刊『レースの歴史とデザイン』(1979)』


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百科事典マイペディア 「レース」の意味・わかりやすい解説

レース

糸で透かし模様を編んだもの。広義には布に透かし模様を刺繍(ししゅう)したものも含める。手編みレースと機械レースに大別され,手編みレースには針で編むニードル・ポイント・レースや糸巻を使うボビン・レースがある。機械レースには木綿,麻,チュールなどに刺繍を施してレース状にしたエンブロイダリー・レースや,布に刺繍をし,土台の布を化学的に溶かしてレース状にしたケミカル・レースがある。現代風のレースはルネサンス時代ベネチアで作られ,宮廷の男女に愛用されてヨーロッパに普及,レース職人によって精巧なものが作られ,18世紀まで欠くことのできない服飾品であった。フランス革命後女性だけの服飾品となり,19世紀の機械レースの出現で一般に広く用いられるようになった。
→関連項目ドロン・ワーク

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レース」の意味・わかりやすい解説

レース
lace

糸の輪奈 (ループ) を基本に,からみ,組み,編みなどによってつくられたすきまのある装飾的な布地。古代エジプトの網地やオリエントの房飾りなどに発生の兆しがみられるが,中世ヨーロッパでおもに修道院での手仕事として存続した。 15世紀末,刺繍とともに服飾や家具の主要な装飾法となり,以後,西洋各国の特色を加えながら普遍化した。おもな生産国はイタリア,フランス,オランダ,ベルギー,イギリス,スペインで,19世紀後半以後,種々の機械や化学処理法が発明され,次第に手工レースは減少した。材料は亜麻,絹,綿,ウール,金銀糸など。主要な技法にニードルポイントレースボビンレースクローシェレースなどがある。

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