レンジャク(読み)れんじゃく(英語表記)waxwing

翻訳|waxwing

改訂新版 世界大百科事典 「レンジャク」の意味・わかりやすい解説

レンジャク (連雀)
waxwing

スズメ目レンジャク科レンジャク亜科の鳥の総称。この科の鳥は全長15~20cm,羽毛が絹状で柔らかく,冠毛をもっている。くちばしは扁平で短く,脚も短く,全体にずんぐりした体つきをしている。次列風切羽の先端には,水滴の形をした赤い蠟状物質があり,これが英名の由来になっている。森林樹上に群れをつくって生活し,漿果(しようか)や小さな果実主食としている。繁殖期には,針葉樹林落葉樹針葉樹混交林にすみ,樹上にわん形の巣をかけ,4~6個の卵を産む。雌だけで約14日抱卵し,雌雄ともに雛に給餌する。おもに飛んでいる昆虫を追いかけ,扁平なくちばしで巧みにくわえとって雛に与える。雛は15~17日で巣立つ。秋から冬には,暖かな地方に渡るが,繁殖地周辺の地域に食物が豊富な年にはあまり南へ移動しない。このため南方で越冬する個体の数は,年によって著しく異なる。冬の間は,明るい林や林縁などに群れですみ,市街地にも現れ,人をあまり恐れないので近くから観察できる。ヒィー,ヒィーと低い声で鳴く。ヤドリギの実を好んで食べるため,ヤドリギの伝播でんぱ)者としても知られている。ヨーロッパ,アジア,北アメリカに3種が分布する。

 キレンジャクBombycilla garrulus(英名bohemian waxwing)は全長約20cm,全身がブドウ色を帯びた灰褐色をしていて,のどと過眼線が黒く,下尾筒は栗色である。翼は黒く,白色と黄色の斑があり,黒い尾の先端が名のように鮮やかな黄色をしている。ユーラシア大陸および北アメリカの亜寒帯北部で繁殖し,日本には冬鳥として渡来する。ヒレンジャクB.japonica(英名Japanese waxwing)は全長約19cm,羽色は前種によく似ているが,名のように尾の先端が鮮やかな赤(緋)色である。シベリア南東部で繁殖し,日本には冬鳥として渡来する。キレンジャクによく似たスギレンジャクB.cedrorum(英名cedar waxwing)は全長約16cmの最小種で,北アメリカに分布する。

 レンジャク科には,レンジャク類のほかにキヌゲレンジャク類4種とハイイロレンジャク類1種が含まれる。キヌゲレンジャク類は全長約20cm,長い冠毛と尾をもち,雄は灰褐色や紫黒色をしているが,雌は暗灰色や褐色である。森林に群れですみ,レンジャク類よりも昆虫類をよく食べる。北アメリカ南部からパナマに分布する。ハイイロレンジャクは全長約18cm,全体が淡灰色で,小さな冠羽をもち,眼の後方から後頭に黒帯がある。翼は黒と白で,長い尾の先端も黒い。ヤシ林や灌木林に群れですみ,漿果や果実を主食にする。南西アジアに分布する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レンジャク」の意味・わかりやすい解説

レンジャク
Bombycillidae; waxwings

スズメ目レンジャク科の鳥の総称。キレンジャクヒレンジャク,ヒメレンジャク B. cedrorum の 3種からなる。3種とも外形が似ていて,先のとがった冠羽(→羽冠)をもち,独特の姿をしている。ヒレンジャクは全長約 18cmで,ロシア東部や東アジア北部に生息し,日本には冬鳥(→渡り鳥)として全国各地に渡来する。ヒメレンジャクは色彩がキレンジャクに似ているが,全長 15~18cmで体がやや小さく,北アメリカ中部に繁殖分布し,北アメリカ南部や中央アメリカ,ときには南アメリカまで渡って越冬する。レンジャク類は針葉樹林で繁殖するが,非繁殖期には群れになり,落葉樹の疎林,農耕地,公園などでも暮らしている。昆虫類も食べるが,初夏から冬までは漿果(→液果)などの果実が主食で,春は樹液や木の芽などを食べる。和名のレンジャク(連雀)は群れになる鳥という意味でつけられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レンジャク」の意味・わかりやすい解説

レンジャク
れんじゃく / 連雀
waxwing

広義には鳥綱スズメ目レンジャク科、狭義にはそのうちのレンジャク属に含まれる鳥の総称。この科Bombycillidaeの仲間は全長16~24センチメートル。ハイイロレンジャクモドキ属、レンジャクモドキ属、セグロレンジャクモドキ属がメキシコ、グアテマラ、コスタリカなどに、ミミグロレンジャクモドキ属がイラク、アラビアに、レンジャク属がユーラシアならびに北アメリカに分布し、レンジャク属が3種であるほかは1属1~2種で、計5属8種が知られている。

 レンジャク属Bombycillaには、北アメリカで繁殖し、南アメリカまで渡るヒメレンジャクB. cedrorum、アムール、ウスリー地方で繁殖し、冬には日本など南へ渡るヒレンジャクB. japonica、ユーラシア、北アメリカの北部で繁殖し、冬には南へ渡るキレンジャクB. garrulusの3種がある。この類は、嘴(くちばし)が短く頑丈で、上嘴がわずかに鉤(かぎ)形になっている。体色は茶色で、尾の先の色が鮮やかな黄色や紅色をしている。次列風切(かざきり)の先端に蝋(ろう)のようにみえる小片を有するのが英名の由来である。一方、和名「連雀」は、日本のような越冬地では群れで生活することが多いことに由来する。

[柳澤紀夫]


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百科事典マイペディア 「レンジャク」の意味・わかりやすい解説

レンジャク

レンジャク科の鳥の総称。日本にはキレンジャク,ヒレンジャクの2種が冬鳥として渡来。キレンジャクはユーラシアと北米の北部で繁殖,ヒレンジャクは沿海地方で繁殖する。両種とも翼長11cm内外,羽冠が顕著で体色は赤みがかった灰褐色。尾の先端がキレンジャクは黄色,ヒレンジャクは赤色。低地〜山地の林にすみ,ズミ,イボタ,その他の木の実を食べる。ヒーヒー,チリチリチリ等と鳴く。

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