レイジンソウ
Aconitum loczyanum Rapaics
林のへりや草原に生えるキンポウゲ科の多年草。地下茎は直立し,ふつう,いくつかの条に分かれ,根のようにみえる。茎は直立または垂れ曲がり,ふつう分枝する。根生葉は5~7中裂し,基部は心形,裂片は粗く鈍い鋸歯がある。花期は9~10月。花序は総状,しばしば下部で分枝し,3~15個の花をつける。花は左右相称,淡紅紫色で,高さ約2.5cm。萼片は5枚,花弁状。頂萼片は細長いかぶと状になり,なかに2枚の蜜腺をもった花弁を入れる。側萼片は2枚,下萼片は2枚。おしべは多数。めしべは3本,それぞれ熟すと袋果になる。本州(関東地方以西),四国,九州に分布する。エゾノレイジンソウ(別名オオレイジンソウ)A.gigas Lév.et Van't.は葉の欠刻が鋭く,花は淡黄色。本州,北海道の亜高山帯の,針葉樹林のへりに生え,サハリン,北朝鮮,満州よりオホーツク地方に分布する。
執筆者:田村 道夫
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レイジンソウ
れいじんそう / 伶人草
[学] Aconitum loczyanum Rapaics
キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)の多年草。トリカブトに近縁であるが、本種の根は多年生である。茎は高さ30~80センチメートル、つねに円形の根出葉がある。8~9月、総状花序をつくる。兜(かぶと)状の上萼片(がくへん)は細長く、淡紫色で、青みは帯びない。花柄は開出毛を密生する。温帯の林内に生え、関東地方以西の本州から九州に分布する。近縁種に、中部地方以北の本州に分布するアズマレイジンソウA. pterocaule Koidz.と滋賀県伊吹山(いぶきやま)特産のイブキレイジンソウA. chrysopilumがあるとされ、これらは花柄に屈毛を密生する。名は、花の形が舞楽の伶人(れいじん)がかぶる冠に似ることによる。
[門田裕一 2020年3月18日]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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「レイジンソウ」の意味・わかりやすい解説
レイジンソウ
本州〜九州の林間の湿った草地にはえるキンポウゲ科の多年草。全体に柔らかく,茎は高さ40〜80cm,根出葉は長い葉柄があり,腎円形で掌状に5〜7中裂する。夏〜秋,茎頂や葉腋に花穂を出し,淡紫色の花を開く。花はトリカブトに似るが,上側の萼片は筒形となり,後ろに曲がる。漢方では根を秦【きゅう】(しんきゅう)の名で鎮痛剤などとする。近縁のエゾノレイジンソウ(オオレイジンソウ)は葉の欠刻が鋭く,花は淡黄色。
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