ルーカス(Robert E. Lucas, Jr.)(読み)るーかす(英語表記)Robert Emerson Lucas, Jr.

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ルーカス(Robert E. Lucas, Jr.)
るーかす
Robert Emerson Lucas, Jr.
(1937―2023)

アメリカの経済学者。新しい古典派経済学の代表的な学者である。ワシントン州ヤキマ生まれ。1959年にシカゴ大学で歴史学の学士号を得た後、経済学に転じ、1964年に同大学で経済学博士号を取得。カーネギー工科大学(現、カーネギー・メロン大学)などを経て、1975年からシカゴ大学教授。合理的な経済主体は将来予想の形成に関して利用可能な情報最大限活用して最善予測を行うという「合理的期待仮説(rational expectations hypothesis)を経済モデルに導入してマクロ経済分析を変革し、経済政策に対する理解を深めた」との理由で、1995年のノーベル経済学賞を受賞した。

 1972年に論文「Expectations and the Neutrality of Money」を発表し、裁量的な財政・金融政策による景気刺激策が有効だとするケインズ経済理論を批判し、政策無効命題を掲げて、景気低迷とインフレーションが同時に進行した1970年代に注目を浴びた。人々は情報を最大限に活用して期待を形成するので、合理的期待を織り込んでいない計量モデルによる将来予測は当たらないとの仮説は、各国の政策に大きな影響を及ぼした。

[金子邦彦]

『清水啓典訳『マクロ経済学のフロンティア』(1988・東洋経済新報社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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