ルノー(英語表記)Renault S.A.

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルノー」の意味・わかりやすい解説

ルノー
Renault S.A.

フランスの自動車会社。1898年ルイ・ルノーと兄弟によってルノー・フレールとして創立。1905年,のちにタクシーとして広く採用される最初のモデルを発表,第1次世界大戦中に 600台のタクシーで兵士を戦場へ運ぶ作戦を遂行した「マルヌのタクシー」として名をはせた。1920年代には小型車の生産に乗り出し,フランスの自動車産業における有力な企業の一つとなった。第2次世界大戦後ナチスに協力したとして,1945年資産を国家に押収されるとともに国有化され,ルノー公団となった。のち,小型乗用車 4CVの大量生産に成功,1955年子会社サビエム SAVIEMを設立,トラック,バスなどの生産に進出。中型乗用車を中心に商業車,トラクタ,工業・船舶用エンジンを生産するほか,1974年シトロエンのバス・トラック部門や自動車メーカーの M.ベルリエを買収したのをはじめ,精密工具メーカーのコンストリュクシオン・ド・クリシ,オートバイメーカーのベロソレックスを買収するなど事業多角化を推進した。1990年にボルボと乗用車,商用車で提携し,株式会社に組織変更。フランス政府がボルボに 25%の株式を譲渡した。ボルボとの合併案はのちに撤回され,2012年にルノーは保有するボルボの株式をすべて売却した。一方 1999年日産自動車との間で資本提携を結び,事実上日産を傘下に収めた。同年にルーマニアのダチア,2000年にはサムスン・モータースも傘下に収めた。

ルノー
Renault, Louis

[生]1877. パリ
[没]1944.10.24. パリ
フランスの自動車製造者。フランス最大の自動車会社ルノーの創業者。1898年に初めて自動車を製造した。2人の兄フェルナン,マルセルとともに小型自動車を開発し,ルノー・フレール社を設立した。ルノー・フレールの車は数々のレースで優勝し注目を集めたが,1903年のパリ―マドリード自動車レースでマルセルが事故死,以後ルノーは自動車レースから撤退し,自動車製造に専念した。1918年に開発したルノーFT戦車は,第1次世界大戦末期に歩兵護衛に活躍した。ブーローニュビヤンクールの工場の生産能力を増強し続け,戦後は農業機械,船舶機器,工業機械,ディーゼルエンジン(→ディーゼル機関)へと事業を拡大した。第2次世界大戦中もドイツ占領下で軍需品の製造を続けたため,フランスが解放されると,ナチスの協力者として投獄された。裁判前に獄中で死亡。ルノーの死後,1945年にルノー社は国有化された。

ルノー
Renault, Jean Louis

[生]1843.5.21. オータン
[没]1918.2.8. バルビゾン
フランスの法学者。ディジョン,パリ両大学教授を歴任,ローマ法,商法,国際法を担当したほか,外務省顧問 (1890) として外交政策を国際法の観点から検討。ハーグ平和会議 (99,1907) ,ロンドン軍縮会議 (08~09) などに出席。仲裁裁判官として多くの紛争の仲裁に成功。 1907年イタリアの E.モネータとともにノーベル平和賞を受賞した。主著"Introduction à l'étude du droit international" (1879) 。

ルノー
Renaud, Madeleine-Lucie

[生]1900.2.21. パリ
[没]1994.9.23. パリ郊外
フランスの女優。 1921年コメディー・フランセーズで初舞台を踏み,モリエール喜劇の生娘役で成功,早くから映画にも出演,その洗練された演技人気を呼んだ。 J.-L.バロー結婚し,46年劇団を創立,マリニー座で J.ジロドゥや P.クローデルの作品を演じ,S.ベケット,M.デュラスなど前衛的作品でも意欲的に活躍。現代フランスきっての名優と認められる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ルノー」の意味・わかりやすい解説

ルノー
Madeleine Renaud
生没年:1900-94

フランスの女優。パリに生まれ,コンセルバトアール演劇科を首席で卒業,21年にコメディ・フランセーズに入座し,28年に正座員となる。はじめは娘役を,やがてコケット役に転じ,その美貌と端正な演技で観客を魅了した。第2次大戦中の42年にモンテルラン作《死せる女王》,43年にはジャン・ルイ・バロー演出のクローデル作《繻子の靴》など大作の主役を演じて成功したが,46年に夫でもあるバローとともにコメディ・フランセーズを退団,ルノー=バロー劇団を創設した。以来,もっぱら古典劇で活躍してきたが,60年代より前衛劇にも進出し,とくに63年のベケット作《美わしの日々》のウィニー役は絶賛を博した。その後もデュラスやジュネらの新作に出演している。明晰なせりふ回し,優雅な身ぶり,そして何よりも戯曲の内奥に迫ろうとする激しい気迫は,観客に圧倒的な感銘を与える。ルノーというひとりの女優のなかに古典と前衛,伝統と革新の融合が,フランス演劇そのものが体現されているといっても過言ではない。
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百科事典マイペディア 「ルノー」の意味・わかりやすい解説

ルノー

フランスの女優。コンセルバトアール演劇科卒業後,コメディ・フランセーズで人気を博した。1940年バローと結婚,1946年ルノー=バロー劇団を結成し,マリニー座を拠点に活躍。可憐(かれん)な娘役から老(ふけ)役まで幅広い演技力の持主で,《白き処女地》など映画出演も多い。

ルノー

フランスの法学者。ディジョン,パリ等の大学で商法や国際法を講じ,後政府顧問,国際仲裁裁判所判事,ハーグ国際平和会議代表。モネタとともに1907年ノーベル平和賞。著書多数。

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367日誕生日大事典 「ルノー」の解説

ルノー

生年月日:1843年5月21日
フランスの法学者
1918年没

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