ルシッド

精選版 日本国語大辞典 「ルシッド」の意味・読み・例文・類語

ル‐シッド

(原題Le Cid) 悲劇。五幕。コルネイユ作。一六三七年パリのマレー劇場初演。決闘婚約者のロドリーグに父を殺された娘シメーヌと、ロドリーグ(ルシッド)の愛と義務相克韻文で描いた、フランス古典劇を代表する名作の一つ。日本でも榎本破笠が「鎌倉武官」、飯田旗軒が「哀々記」などの題名で早くから翻案紹介した。

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デジタル大辞泉 「ルシッド」の意味・読み・例文・類語

ル‐シッド(〈フランス〉Le Cid)

コルネイユ韻文悲劇。5幕。1637年初演。父のかたきゴスマスを殺したロドリーグと、彼の婚約者でゴスマスの娘シメーヌとの愛と義務の相克を描く。
マスネーオペラ。全4幕。1885年初演。に基づく。第2幕のスペイン各地の舞曲を取り入れたバレエ音楽有名

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改訂新版 世界大百科事典 「ルシッド」の意味・わかりやすい解説

ル・シッド
Le Cid

フランスの劇作家コルネイユ戯曲。5幕韻文悲喜劇。1637年初演。スペインのギリェン・デ・カストロの戯曲《エル・シドの青年時代》を粉本としているが,その冗慢さを除去し,単純明快な筋にし,人物の心理,葛藤を中心に描いて,フランス古典主義演劇への一歩を印した。舞台は11世紀のセビリャ。主人公ロドリーグは恋人シメーヌの父に家門の名誉を汚され,苦悩の末に英雄的な意志力で恋情を克服し,恋人の父を決闘で倒す。一時はシメーヌも仇として彼の死を求めるが,かえって二人の恋は深まり,将来を誓うという筋。マレー座で上演され,未曾有の大成功を収めた。従来のような運命に一方的に押しつぶされる人間の不幸ではなく,名誉と恋の葛藤を強い意志の力で乗り越える,つまり意志が自己の運命を決定する点に新しさがあった。この大成功は一部に反感を呼び,有名な〈ル・シッド論争〉が起き,その剽窃(ひようせつ)性,反規則性(三統一の法則への違反),不道徳性が非難されたが,比類ない古典劇の傑作としてなお上演され続けている。日本にも明治末から翻案紹介されている。
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世界大百科事典(旧版)内のルシッドの言及

【悲喜劇】より

…この場合は悲劇と喜劇とを主人公の身分で分ける定義から出発しているが,ルネサンス期の学者J.J.スカリゲルらは,幸福な結末に終わる悲劇を悲喜劇と定義した。17世紀のフランス古典劇でも,主人公の死に終わらぬP.コルネイユの《ル・シッド》などがそう呼ばれた。モリエールの《人間嫌い》は深刻な結末をもつ喜劇といってもいいだろう。…

※「ルシッド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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