日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ルイス(Oscar Lewis)
るいす
Oscar Lewis
(1914―1970)
アメリカの文化人類学者。コロンビア大学でルース・ベネディクトの下で人類学を学び、まずアステカ文化の伝統を受け継ぐメキシコのテポストランで集中的なコミュニティ研究を行う。1948年以来イリノイ大学で教鞭(きょうべん)をとり、メキシコ以外にスペイン、インド、プエルト・リコ、キューバなどで調査を行った。ルイスは、それまでの伝統的人類学がもっぱら対象としてきた小規模で均質的な「未開」社会から、現代の都市の住民へと視野を広げることにより、人類学に新しい展開をもたらした。とりわけ、主著『貧困の文化』(1959)は、メキシコ各地からメキシコ・シティに移住してきた5家族の日常生活を克明に描写し、「貧困の文化」が地域や国境を越えて存在することを示した。その他の著書に、『サンチェスの子供たち』(1961)、ピュリッツァー賞を受けた『ラ・ビーダ』(1966)などがあり、人類学者のみならず、世界中で広範な注目と共感を呼び起こした。
[加藤 泰 2019年1月21日]
『柴田稔彦・行方昭夫訳『サンチェスの子供たち――メキシコの一家族の自伝』合本版(1986・みすず書房)』▽『行方昭夫・上島建吉訳『ラ・ビーダ――プエルト・リコの一家族の物語』全3巻(1970、1971・みすず書房)』