リン青銅(読み)リンセイドウ

化学辞典 第2版 「リン青銅」の解説

リン青銅
リンセイドウ
phosphor bronze

Cu-Sn合金リンが添加されたCu-Sn-P合金である.青銅(スズ青銅)でも普通,融解鋳造にあたってリンを脱酸剤として利用するが,実際の合金中のリンの残留量はごく少量である.リン青銅の場合,リンは0.05~0.5質量% 含有されるようにする.リンが添加されると鋳造時の湯流れがよくなり,また合金の硬さと強さがいちじるしく増加し,耐摩耗性,弾性が改良される.リンは少量固溶するが,それ以外は硬くてもろいCu3P化合物として存在する.高弾性を利用して,板,線などの加工材としたばね用材料に,また耐食性,耐摩耗性を利用してポンプ部品,歯車,船舶用部品,化学機械用部品などの鋳物に使用される.ばね用リン青銅の組成はSn 7~8質量%,P 0.05~0.15質量% である.鋳造用リン青銅の組成はSn 9~16質量%,P 0.10~0.60質量% である.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リン青銅」の意味・わかりやすい解説

リン青銅
リンせいどう
phosphor bronze

青銅の溶製に脱酸剤として使うリン剤の使用量を普通より多くして,青銅中にリンが 0.03~0.35%残るように製造したものをいう。普通青銅よりも弾性,耐食性がよく,ばね材,機械可動部品に用いられる。加工用リン青銅の組成はスズ 3.0~9.0%,リン 0.03~0.35%の範囲にあり,ばね材にはスズ7~9%のものが使われる。鋳物用はスズ,リンともに高くスズ 10~16%,リン 0.1~0.6%とする。湯流れはよいが偏析を生じやすいので,鋳造は金型を用い急冷する必要がある。スズ4~6%,リン 0.01~0.5%に鉛1~4%加えたものは切削性がよくなるので快削リン青銅といい,軸受,歯車,ねじボルトナット,摺動部品などに用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リン青銅」の意味・わかりやすい解説

リン青銅
りんせいどう
phosphor bronze

銅‐スズ合金にリンを加えた固溶体合金。1854年フランスのルールM. Roulzにより発明された。低スズの青銅をリン銅で脱酸しただけでリンが合金中に残っていないもの、10%以上のスズに1.5%までのリンを加えたもの、両者中間のものの3種がある。ばね用のリン青銅は7~9%スズ、0.03~0.05%リンで、冷間加工および低温焼きなましを施して使う。

[三島良續]

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