リン酸塩(読み)リンサンエン

化学辞典 第2版 「リン酸塩」の解説

リン酸塩
リンサンエン
phosphate

一般には,オルトリン酸H3PO4の塩をいう.MH2PO4,M2HPO4,M3PO4の3種類の塩がある.アルカリ金属の塩はリチウム塩を除き水に可溶である.アルカリ金属塩はリン酸と各金属の水酸化物の反応で,重金属塩などはそれら金属の可溶性塩とアルカリ金属塩との複分解で得られる.いずれも四面体型のPO4が独立に存在する.アルカリ土類金属リン酸塩のうち,天然にもCa塩がリン鉱石(りん灰石)として存在する.二水素塩以外は難溶である.CaHPO4は水に溶けにくいので,肥料として用いるには,可溶性の二水素塩Ca(H2PO4)2 とする必要がある.重過リン酸石灰ともよばれ,リン酸肥料として重要である.鉄鋼の防食法の一つであるパーカライジング法は,金属表面にリン酸塩皮膜をつくることによる.リン酸塩の用途としては,ポリリン酸塩の高分子性を利用したものが多い.H3PO4は三塩基酸なので,中性塩のM3PO4と,酸性塩のM2HPO4およびM H2PO4の3種類の型の塩が存在する.アルカリ金属塩の水溶液は,中性塩はアルカリ性,一水素塩は微アルカリ性,二水素塩は微酸性である.塩の固体を加熱すると,中性塩は反応しにくいが,一水素塩は二リン酸塩に,二水素塩はメタリン酸塩に,また,一,および二水素塩を適当な比に混合して加熱すると,比に応じた長さの鎖状ポリリン酸塩がおもに得られる.種々の金属の塩が,それぞれの用途に利用される.ことにCaのリン酸水素塩は,肥料として重要である.そのほかの塩は,それぞれ耐熱性材料,金属のさび止め剤,洗剤ビルダー,イオン交換体,セラミックスの材料,吸着剤触媒,歯磨き剤などに用いられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リン酸塩」の意味・わかりやすい解説

リン酸塩
りんさんえん
phosphate

リン酸の塩。リン酸の種類により種々の塩があるが、普通はオルトリン酸塩(正リン酸塩)をさす。置換される水素原子の数によって3種のリン酸塩がある。二水素塩MIH2PO4はすべて水に溶けるが、一水素塩MI2HPO4正塩MI3PO4はアルカリ金属塩だけが溶け、正塩は一水素塩よりも溶けにくい。加熱すると二水素塩はメタリン酸塩、一水素塩は二リン酸塩(ピロリン酸塩)になるが、正塩は変化しない。リン酸塩のもっとも重要な用途は肥料である。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「リン酸塩」の解説

リン酸塩

 リン酸の塩で,通常正リン酸の塩.緩衝剤,安定剤,粘着剤などの目的で食品添加物として使用されているものもある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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