リュルサ(英語表記)Jean Lurçat

改訂新版 世界大百科事典 「リュルサ」の意味・わかりやすい解説

リュルサ
Jean Lurçat
生没年:1892-1966

フランス画家タピスリー作家。ボージュ県ブリュイエールBruyères生れ。ナンシープルーベV.Prouvéのアトリエで絵画を学んだ後,1913年ころパリに出てキュビスムシュルレアリスムの影響下に絵画や版画制作。タピスリーにも早くから興味をもち,下絵を描いたりしていたが,38年に《アンジェ黙示録》を見て強い衝撃を受け,翌年以降オービュソンでこの織物芸術の革新に情熱を傾けることになる。独自の記号や数字を用いたカルトン(下絵)を工夫し,織師たちの協力を得ながら,織物のもつ平面的効果を明快な色彩と力強いフォルムによって強調し,現代に中世のタピスリーの魅力を復活させた。鳥,魚,花,木,太陽などの自然と人間をモティーフに選び,宇宙的・哲学的なテーマを詩情豊かに表現している。代表作は《四季》(1939),《世界の歌》(1957-63)など。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リュルサ」の意味・わかりやすい解説

リュルサ
りゅるさ
Jean Lurçat
(1892―1966)

フランスの画家、タペストリー作家。フランス東部のブリュイエールに生まれる。初め医学を学んだがしだいに絵画にひかれ、ナンシーのビクトール・プルーベのアトリエやパリのベルナール・ノダンのアトリエで絵を学ぶ。マチスピカソ感化を受けた色彩と形体の抽象化に加えて、スペイン、アフリカ、小アジアなどへの旅行によって得た異国的な幻想風景を、シュルレアリスムの影響による独自の画風に展開した。15世紀以来タペストリーで有名なオービュッソンの綴(つづれ)織に関心を示し、1937年オービュッソンのデザイナーとして、装飾的で幻想的な数々の作品を制作した。タペストリーの伝統を現代に復興した功績は大きい。代表作に『黙示録のタペストリー』(プラトー、ダッシー聖堂)がある。南フランス、サン・ポールで没。弟のアンドレAndré Lurçat(1894―1970)は建築家として著名。

[染谷 滋]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リュルサ」の意味・わかりやすい解説

リュルサ
Lurçat, André

[生]1894. パリ
[没]1970.7.12. ソー
フランスの建築家。画家ジャン・リュルサの弟。ナンシーで学び,のちパリで活躍。集合住宅,病院,学校などを設計。フランスの 1920年代後期と 1930年代初頭を代表する国際様式を採用し,ビルジュイフの学校群 (1931~33) やウィーンのジードルング (集合住宅,1932) などを建てた。近代建築国際会議 CIAMの創始者の一人。

リュルサ
Lurçat, Jean

[生]1892.7.1. ブリュイエール
[没]1966.1.6. サンポール
フランスの画家。 V.プルーベに師事。南欧,小アジア諸国を旅行し,東方芸術の詩情を加味した一種独特の超現実的風景画を描いた。初めアンデパンダン展,1920年以後はサロン・デ・チュイルリーに出品。のちゴブラン織のデザインに専念し,タペストリーの芸術性の向上と発展に尽した。主要作品は P.エリュアールの詩による『自由』 (1943,パリ国立近代美術館) 。

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百科事典マイペディア 「リュルサ」の意味・わかりやすい解説

リュルサ

フランスの画家,タピスリー作家。ナンシーのプールベのアトリエで学ぶ。1913年ころパリに出て,キュビスムの影響を受けたのち,詩情に富む装飾的画風を確立。1939年よりオービュソンにアトリエを置き,タピスリーの制作に主力を注いだ。中世の手法を復興させた現代タピスリーの第一人者。

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世界大百科事典(旧版)内のリュルサの言及

【タピスリー】より

…またルオー,マティスなど現代作家の絵画作品を織物に移す試みも行われる。しかし,もっとも重要な役割を果たしたのはリュルサである。彼は《アンジェの黙示録》など中世のタピスリーに触発され,独自のカルトンを考案して,織師と協力しつつ,タピスリーの新しい美を創造した。…

※「リュルサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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