リットン・インダストリーズ(読み)りっとんいんだすとりーず(英語表記)Litton Industries, Inc.

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

リットン・インダストリーズ
りっとんいんだすとりーず
Litton Industries, Inc.

アメリカの軍需エレクトロニクス軍艦メーカー。2001年以降は総合軍需企業のノースロップグラマン社の傘下にある。

 リットン・インダストリーズ社は、1934年にチャールズ・リットンCharles Litton Sr.が創立した真空管メーカーであった。1953年にチャールズ・B・ソーントンCharles Bates Thornton(1913―1981)が創立したマイクロウェーブ用真空管メーカーのエレクトロ・ダイナミックス社Electro Dynamics Corp.に買収されたが、社名はリットン・インダストリーズが採用され、おりからの軍用エレクトロニクスの急発展とともに成長を遂げた。同社はまた積極的な企業買収で規模を拡大し、1960年代にはインガルス造船所Ingalls Shipbuildingを傘下に収めるなど異業種にも手を伸ばして、エレクトロニクス・情報技術と造船の大手企業となった。

 1970年、同社はアメリカ海軍から、全ガスタービン推進のスプルーアンス級駆逐艦を31隻一括受注した。これは当時国防省が進めていたトータル・パッケージ方式による契約で、従来のように同一設計を複数の造船所で建造するかわりに、単一のメーカーが設計から全艦の建造、サービスまで一括して請け負うという画期的方式の試みであった。リットンは造船にも積極的にオートメーションを取り入れてコストダウンを図る計画であったが、実際には自動化は中途半端に終わり工員の教育も不十分で、スプルーアンス級の建造コストは受注額の2倍にも跳ね上がった。スプルーアンス級は1975年から1983年の間に海軍に引き渡されたが、海軍は二度とトータル・パッケージ方式で軍艦を発注することはなかった。しかしスプルーアンス級駆逐艦の設計自体は成功で、改修を重ねながら1990年代なかばまで海軍の主力一翼を担い続け、また基本設計はタイコンデロガ級イージス巡洋艦(イージス艦)に利用された。

 冷戦終焉(しゅうえん)後の軍需産業再編の流れのなかでも、リットンはエイボンデール造船所Avondale Shipbuildingを買収するなど、積極的に企業買収による成長路線をとった。リットンは1990年代末には年間売上げ40億ドルに達し、国防省の契約企業十傑の地位を保っていた(1998年の売上げ・サービス収入は43億9990万ドル、純利益は1億8140万ドル)。しかしこの規模でもロッキード・マーチンボーイングのような総売上げ数百億ドルの超巨大企業との競争は困難で、2001年4月ついにリットン・インダストリーズはノースロップ・グラマンに51億ドルで買収されることになった。吸収後、リットンのインガルスとエイボンデールの両造船所はノースロップ・グラマンの船舶システム部門に組み込まれ、エレクトロニクス関連は分散してほかセクターに組み入れられた。

[野木恵一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

リットン・インダストリーズ
Litton Industries, Inc.

かつて存在した防衛用電子機器および軍艦建造を手がけるアメリカ合衆国のメーカー。1953年チャールズ・B.ソーントンによりエレクトロ・ダイナミックスとして設立された。当初はカリフォルニア州ビバリーヒルズの一無名電子機器会社であったが,同年リットン・インダストリーズ,ウェストコースト・エレクトロニクスを合併,1954年社名をリットン・インダストリーズに変更した。1958年から 1960年代にかけて計算機メーカーのモンロー,スウェーデンの金銭登録機メーカーのスベンスカ,造船のインガルズ・シップビルディング,タイプライタのロイヤル・マクビーなど約 80社に及ぶ異種企業の買収,合併を続けて事業を拡大,急成長を遂げ,アメリカのコングロマリットの元祖になった。海外事業も拡大を続け,世界中に 1000に及ぶ直轄販売事務所,3万のディーラー,代理店を有し,35ヵ国で活躍する多国籍企業となった。1994年に資源探査および産業自動化システム部門を分離し,防衛用電子機器の製造と軍艦建造に事業内容を特化した。その後は関連分野での戦略的買収を続け,経営の強化をはかったが,2001年同業のノースロップ・グラマンに買収された。

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