日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ラング(Andrew Lang)
らんぐ
Andrew Lang
(1844―1912)
イギリスの詩人、童話作家、民俗学者。スコットランド生まれ。7冊の詩集のほか、テニソンの伝記、メアリー・スチュアートをめぐる研究、小説など、60巻を超す著作がある。なかでも重要なのは『習慣と神話』(1884)、『宗教の起源』(1898)などの文化人類学的業績、ホメロスのオデュッセイアなどの英訳(ブッチャーSamuel Henry Butcher(1850―1910)らと共訳、1879、1883)や、『ラング童話集』全12巻(1889~1910)の集大成の仕事である。
[高橋康也 2016年10月19日]
ラング童話集
神話、宗教、民俗の研究家ラングはまた童話の重要性を痛感して、『青色の妖精(ようせい)の本』(1889)を編集した。ペロー、グリム、ドノワ夫人Madame d'Aulnoy(1650/1651―1705)の著作物や、アラビアン・ナイトのほか、広くイングランド、スコットランド、北欧から集めて再話したこの本には、「眠れる森の美女」「美女と野獣」「ヘンゼルとグレーテル」「長靴をはいた猫」「ジャックと豆の木」「青ひげ」などの名作が含まれ、大成功を収めた。以後、巻ごとに色を冠した童話集が編まれ、英語圏の子供の多くはラング版によって世界中の童話・民話に親しむようになった。
[高橋康也 2016年10月19日]
『西村醇子監修『アンドルー・ラング世界童話集』全12巻(2008~2009・東京創元社)』