日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ラム(Wirufredo Lam)
らむ
Wirufredo Lam
(1902―1982)
キューバ生まれの画家。父は中国人、母は白人と黒人の混血であった。ハバナ美術学校を出てからスペインで画家の修業を積んだ。1937年パリに移住し、ピカソを知り、その後シュルレアリスムの運動にも参加した。41年にはハバナに帰国し、以後はアメリカ各地を転々とする。この間、シュルレアリスムの影響を発展させて、独特の作風を確立した。その絵画は、故郷であるキューバの民族的伝統から多くを得たといわれ、簡潔な抽象形態のなかにトーテムをはじめとする土俗的信仰や民間伝承のイメージが展開して、現代の合理主義を超えた神秘主義的で初源的な生命力を喚起させる。
[石崎浩一郎]