ラクロ(英語表記)Pierre-Ambroise-François Choderlos de Laclos

精選版 日本国語大辞典 「ラクロ」の意味・読み・例文・類語

ラクロ

(Pierre Choderlos de Laclos ピエール=ショデルロ=ド━) フランス小説家上流社会腐敗題材にとり、近代的心理分析小説「危険な関係」を書いた。(一七四一‐一八〇三

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デジタル大辞泉 「ラクロ」の意味・読み・例文・類語

ラクロ(Pierre Choderlos de Laclos)

[1741~1803]フランスの小説家・軍人。18世紀末の貴族社会の退廃を描き、心理小説先駆とされる書簡体小説危険な関係」で知られる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ラクロ」の意味・わかりやすい解説

ラクロ
Pierre-Ambroise-François Choderlos de Laclos
生没年:1741-1803

フランスの軍人,小説家。北フランスのアミアンに生まれ,職業軍人としての道を歩んだが,軍人としてよりも小説家として名を成した。21歳で砲兵少尉に任官,各地に駐屯し,1769年から75年までグルノーブルに勤務。79年西フランスの孤島エックス島で要塞構築に従事し,その余暇にグルノーブル社交界での見聞をもとに,書簡体小説《危険な関係》を執筆,82年に出版した。88年軍職を退き,ルイ16世の従弟オルレアン公の側近として政治に関与する。89年のフランス大革命とともに,立憲王政を主張するジャコバン党に属し,機関紙《憲法の友》の編集に従事するが,やがて共和派に転じ,軍務に復帰する。しかし,オルレアン公の陰謀に関与したかどで,93年2度投獄される。1800年執政ナポレオンの知遇を得,砲兵少将となり,03年ナポリ派遣軍司令官に任ぜられたが,赤痢ターラントで病没。1日しか公演されなかったオペラ台本,未完の《女子教育論》(1783),《ボーバン頌について》(1786)や若干の政治論文があるが,彼の名を不滅にしたのは,発表当時好色モデル小説として評判になった《危険な関係》である。今日では,革命前夜の貴族階級の堕落を告発した作という説もあるが,知性情念相克主題とし,後者勝利を得る過程を書簡体小説の技法縦横に活用して描いた心理小説と考えられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラクロ」の意味・わかりやすい解説

ラクロ
らくろ
Pierre-Ambroise-François Choderlos de Laclos
(1741―1803)

フランスの作家。アミアンの小貴族の家に生まれる。若いころから数学に興味を示し、ブルジョアの子弟の学ぶラ・フェール学校に入学。1763年に砲兵隊少尉となった。しかし、七年戦争終結とともに、彼の軍人としての栄光の道は閉ざされ、駐屯兵として各地を転々とした。総裁政府期に才能を認められ、砲兵隊将軍となり、イタリアのタラントで客死した。小説『危険な関係』の素材はグルノーブル駐屯時期(1769~73)に得られ、80年夏から翌年の秋にかけて執筆、二度目のパリ休暇(1781年末から82年5月)のおりに完成されたと推定される。83年以来デュペレなる女性と親しく交わり、一児をもうけたのち86年に結婚している。大革命期にはオルレアン公の秘書となり、バレンヌ逃亡以後の国王失墜を策すが、恐怖政治期にピクピュスに監禁され、テルミドール以後釈放された。ラクロは数編の詩、オペラ台本、『女子教育論』などを書いているが、一編の小説『危険な関係』によってのみその名を不朽にした。小説は、よき父親、夫であった彼の復讐(ふくしゅう)の結実とする見方、また彼が軍隊内のフリーメーソン幹部であったという説もある。

[植田祐次]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラクロ」の意味・わかりやすい解説

ラクロ
Laclos, Pierre Ambroise François Choderlos de

[生]1741.10.18. アミアン
[没]1803.9.5. タラント
フランスの作家,軍人。砲兵将校として要塞構築のためラロシェル沖のエクス島に滞在中『危険な関係』 Les Liaisons dangereuses (1782) を執筆,一躍文名を高めた。これはフランス心理小説の系譜上きわめて高い地位を占めている。ほかには男女の平等を説いた『女子教育について』 De l'Éducation des femmes (85) が知られる程度で,短詩,喜歌劇台本などは失敗作に終っている。

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百科事典マイペディア 「ラクロ」の意味・わかりやすい解説

ラクロ

フランスの作家,軍人。軍務のかたわら書いた書簡体小説《危険な関係》(1782年)で有名。厳密巧緻(こうち)な構成,冷徹な心理分析により貴族社会の恋愛を大胆に描く。ほかに《女子教育論》や軍事・政治論文。大革命の時期にはオルレアン公フィリップの秘書として活躍した。
→関連項目バディム

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「ラクロ」の解説

ラクロ Raclot, Marie Justine

1814-1911 フランスの社会事業家。
1814年2月9日生まれ。パリのサンモール会修道女で,明治5年(1872)来日。横浜,東京で外国人子女の教育や日本人孤児の養育などにあたる。日本サンモール会修道院長。明治33年紅蘭女学校(現横浜双葉学園)を創立した。明治44年1月20日死去。96歳。

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世界大百科事典(旧版)内のラクロの言及

【危険な関係】より

…フランスの作家ラクロ書簡体小説。1782年刊。…

※「ラクロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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