ラウエ写真(読み)らうえしゃしん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラウエ写真」の意味・わかりやすい解説

ラウエ写真
らうえしゃしん

X線が通りやすいように薄片にした結晶に連続波長のX線ビームを当て、前方X線フィルムを置いて撮影すると、多くの斑点(はんてん)からなるX線回折写真が得られる。これをラウエ写真、斑点をラウエ斑点という。この像は1912年にラウエならびに協力者フリードリヒWalter Friedrich(1883―1968)とクニッピングPaul Knipping(1883―1935)が発見し、これにより、結晶が格子構造をもつことと、X線が電磁波であることを同時に実証した。ラウエ写真を観察するX線回折法をラウエ法という。一般には、X線を結晶に当てても、いずれかの格子面に関するブラッグ条件が満たされていなければブラッグ反射はおこらない。しかしラウエ法では連続波長分布のX線(連続X線)が使用されるので、各格子面に対し一定方向に入射するX線ビームのなかからブラッグ条件を満足するような波長成分がそれぞれ選択的にブラッグ反射をおこし、それぞれラウエ斑点をつくる。結晶の対称軸の方向にX線を入射させると、ラウエ斑点がみごとに対称的に配列したラウエ写真が得られる。結晶がもつ対称の要素判定結晶軸方位決定にラウエ写真がしばしば利用される。薄い結晶を透過したX線でラウエ写真を撮る方法を透過ラウエ法とよび、これに対して厚い結晶ではフィルム光源と結晶の間に置き、結晶表面から反射したX線を撮影する方法を用い、これを背面(反射)ラウエ法という。

[三宅静雄・石田興太郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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