ライトゥルギー(英語表記)Leiturgie[ドイツ]

改訂新版 世界大百科事典 「ライトゥルギー」の意味・わかりやすい解説

ライトゥルギー
Leiturgie[ドイツ]

公的なleitos奉仕ergonを意味する古典ギリシア語leitourgiaに由来する語。古代ギリシア都市国家が市民に課した,軍船維持・修理,祭典,体育,使節などのさまざまな内容の,臨時および定期の奉仕義務。指名された該当者(事実上,有資産市民)は原則として,みずから赴き,みずからの経費負担で義務を遂行した。ラテン語での対応語がムネラmuneraであり,ローマ帝国治下の属州都市では,参事会員curialesは名誉職honores(ギリシア語ではarchai)として別扱いされ,ムネラとは区別されたが,参事会員の就任忌避が強まるなかで,この区別は実質的意味を失った。

 エジプトでは,ライトゥルギーは対国家強制義務を意味し,ヘレニズム・ローマ初期にはあまり実施されなかったが,紀元後1世紀後半以後しだいに一般的に適用され,ついには県知事stratēgos,村落書記basilikos grammateusより下のすべての役職,奉仕がそれに含まれるに至り,それぞれに詳細な条件が定められて,該当者の範囲の中から任命が行われた。このようなライトゥルギーは,国家財政逼迫(ひつぱく)する4世紀以後のローマ帝国で全帝国的規模で実施され,大量の住民逃亡を引き起こした。やがてキリスト教普及とともに,神に対する奉仕(ミサ)の意味が加わり,現在では英語のliturgyは典礼聖餐式の意味で用いられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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