ヨーロッパ防衛共同体設置案(読み)よーろっぱぼうえいきょうどうたいせっちあん

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ヨーロッパ防衛共同体設置案
よーろっぱぼうえいきょうどうたいせっちあん

ヨーロッパ防衛共同体(European Defence Community 略称EDC)の設置案は、1950年代初期、フランスが発案した再軍備のドイツを組み込んでのヨーロッパの共同防衛構想であった。提案者プレバン首相の名をとって、プレバン・プランともいう。1950年6月に勃発(ぼっぱつ)した朝鮮戦争は、西ヨーロッパ諸国およびアメリカに大きな衝撃を与えた。というのも、これを機に旧ソ連がヨーロッパにおいて行動を起こすかも知れないというおそれを抱いたからである。このことから西ヨーロッパ防衛の強化が迫られ、北大西洋条約機構NATO(ナトー))の枠組みのなかで旧西ドイツの再軍備を認めざるをえなくなった。フランスは、西ドイツが再軍備をすることによって脅威的存在となることを恐れ、すでに発足していたヨーロッパ石炭鉄鋼共同体をモデルとした防衛共同体を設けることによって西ドイツの軍事力をコントロールしようと考えた。つまり、超国家的な防衛共同体に西ドイツを組み込むことにより、同国の軍事力の行使にたがをはめようとしたのである。と同時に、これを機に軍事面においてもヨーロッパ統合を促進したいというのがフランスの意図であった。52年5月、ヨーロッパ防衛共同体創設条約が調印されたが、他の5加盟国すべてが批准をしたにもかかわらず、54年8月、フランスの批准拒否により同共同体は流産した。

岡村 堯]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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