日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ヨルダン(Ernst Pascual Jordan)
よるだん
Ernst Pascual Jordan
(1902―1980)
ドイツの物理学者。ゲッティンゲン大学に学び、1924年量子放射に関する理論的研究で学位を取得。クーラントRichard Courant(1888―1972)の助手をつとめ、行列理論になじむ。1925年ボルンとともにハイゼンベルクを助け、位置座標と運動量との交換関係を示し、行列力学を厳密な理論へと仕上げた。翌1926年、量子力学に関する四つの理論、行列力学、波動力学、ボルン‐ウィグナーの演算子法、ディラックのq数の理論を考察し、のちにノイマンによって定式化された一般的な変換理論を発見、またハイゼンベルクと共同で異常ゼーマン効果を理論的に説明した。1928年には量子化された粒子像と波動像との同等性を検討して場の量子化(クライン‐ヨルダン‐ウィグナーの第二量子化)の方法(この数学的表現は波動と粒子の不確定性関係を含む)を示し、さらにパウリと共同で真空中の電磁場に関する四次元的な量子化を行う。1928年ロストック大学準教授、1935年教授に就任。その後、一般相対性理論に基づいて重力場の理論的研究を進め、定常宇宙論を支持して宇宙の進化を論じたり(宇宙マイクロ波背景放射の発見を機にこの説を取り下げた)、重力理論から地球の膨張を論じる地球物理学的研究を行った。ボーアとともに量子生物学の創始者として、また「ヨルダン代数」などの数学的業績でも知られている。1944年ベルリン大学教授、1947年ハンブルク大学教授となる。
[兵藤友博 2019年1月21日]