ヨシゴイ(読み)よしごい(英語表記)little bittern

改訂新版 世界大百科事典 「ヨシゴイ」の意味・わかりやすい解説

ヨシゴイ (葭五位)
Chinese little bittern
Ixobrychus sinensis

コウノトリ目サギ科の鳥。全長約38cm。日本に生息するサギ類の中では最小種。雄は全体に淡黄褐色ないし淡灰褐色で,頭上と初列・次列風切は黒い。雌や幼鳥は栗褐色の縦斑がはっきりしている。アジアの東部,南部からミクロネシア,ニューギニア,ニューブリテン島まで分布する。熱帯地方では留鳥であるが,日本では夏鳥で,5月上旬に渡来し,九州以北の川岸湿地ヨシ原などで繁殖する。見かけることは比較的少ないが,ときどきヨシ原の上をゆっくり羽ばたいて飛ぶ。単独かつがいですみ,水生の昆虫類,小魚,小型のカエルなどを食べている。群れはつくらないが,数つがいが一つのヨシ原にかたまってすんでいることが多い。湿地のヨシの茎を数本寄せ集め,その上に枯葉や枯茎で皿形の巣をつくる。卵は汚白色で,1腹5~6個を産む。抱卵期間は約18日。オー,オーと寂しい声で鳴く。

 近縁種として,オオヨシゴイI.eurhythmusリュウキュウヨシゴイI.cinnamomeusが日本に分布している。前者はヨシゴイよりやや大きく,色が濃いめである。夏鳥として渡来し,本州中部以北のヨシ原で繁殖するが,ヨシゴイより数が少ない。後者はオオヨシゴイと同大で,羽色は赤色みが強い。琉球諸島に留鳥として生息している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨシゴイ」の意味・わかりやすい解説

ヨシゴイ
Ixobrychus sinensis; yellow bittern

ペリカン目サギ科。全長 37cm。羽色は,頭上が黒色,頸から背は褐色,雨覆は黄褐色,初列風切,次列風切,尾は黒色。胸の側部に黒色の大きな縦斑がある。はやや長く黄色,脚も長めで黄緑色。雌は頸から胸腹部に褐色の縦斑がある。インドから東アジアインドネシアにかけての温帯熱帯に広く繁殖分布し,北方で繁殖するものはインドネシアやパプアニューギニアに渡って越冬する。日本には九州地方以北の各地に夏鳥(→渡り鳥)として渡来し,おもに平地の湖沼や河川のアシ原に生息する。巣に外敵が近づくと,親鳥は上を向いて頸を垂直にいっぱいに伸ばし,体を周囲のアシと同じようにかすかに動かして敵の目をあざむく特異な習性がある。近年,アシ原の埋め立てに伴い,生息数がかなり減少している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨシゴイ」の意味・わかりやすい解説

ヨシゴイ
よしごい / 葭五位
little bittern

広義には鳥綱コウノトリ目サギ科ヨシゴイ属に含まれる鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この属Ixobrychusは世界の温帯、熱帯に広く分布し、8種に分類される。日本にはヨシゴイ、オオヨシゴイ、リュウキュウヨシゴイの3種が夏鳥または留鳥として生息し、繁殖する。

 種のヨシゴイI. sinensisは全長約38センチメートル、日本のサギ類のなかではいちばん小形種である。羽色は全体に淡黄褐色または淡灰褐色で、頭上と初列・次列風切(かざきり)は黒い。雌と幼鳥は背や胸に暗褐色の縦斑(じゅうはん)がある。アジア東部・南部からニュー・ブリテン島にかけて広く分布する。日本には夏鳥として5月初めに渡来し、全国のヨシ原や湿地で繁殖する。目だつ鳥ではないので気がつかないことが多いが、まれな鳥ではなく、ときどきヨシ原の上をゆっくり羽ばたいて飛ぶのをみかける。巣は、湿地のヨシの茎を数本寄せ集め、その上に託して枯れ茎や枯れ葉で皿形につくる。1腹の卵は5~6個、抱卵期間は約18日。夕方などに寂しい声でオー、オーと鳴く。

[森岡弘之]


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百科事典マイペディア 「ヨシゴイ」の意味・わかりやすい解説

ヨシゴイ

サギ科の鳥。翼長14cm。小型のサギで全体に淡褐色。頭と風切羽が淡い黒色。アジア東部から南部にかけて分布。日本では夏鳥として渡来し,河川や湖沼のヨシ原にすむ。小魚,カエル,ザリガニ,昆虫などを食べる。雄は繁殖期にオーッオーッと鳴く。準絶滅危惧(環境省第4次レッドリスト)。
→関連項目サギ(鷺)

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世界大百科事典(旧版)内のヨシゴイの言及

【サギ(鷺)】より

…コウノトリ目サギ科Ardeidaeの鳥の総称。英名は一般にheronであるが,コサギの仲間はegret,ヨシゴイ,サンカノゴイの仲間はbitternと呼ばれる。サギ科は極地を除く全世界に分布し,15~20属約62種に分類される。…

※「ヨシゴイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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