ヨザル(読み)よざる(英語表記)night monkey

改訂新版 世界大百科事典 「ヨザル」の意味・わかりやすい解説

ヨザル (夜猿)
night monkey
Aotus trivirgatus

霊長目オマキザル科の新世界ザル。真猿類中唯一の夜行性の種で,顔つきからフクロウザルオバケザルとも呼ばれる。中央アメリカから南アメリカの中・北部にかけての広い地域に分布する。1属1種であるが,地域的変異が大きく10亜種に分けられる。頭胴長は24~48cm。尾長は22~42cmと長いが,オマキザルやホエザルクモザルのように尾を木に巻きつけて体を支えることはできない。体重は0.8~1.3kg。体色は灰色から赤褐色までいろいろあり,腹部は黄色がかっている。顔にはよく目だつ白と黒の縞模様がある。鼻口部の突出は弱く,前に向いた大きな目をもつ。

 主として熱帯降雨林にすむ樹上生活者で,果実昆虫のほか,小鳥や小型哺乳類も食べる。大きな声を出し,10種類ばかりの特徴的な音声をもつ。雌雄1頭ずつと未成熟の子どもからなるペア型のグループをつくる。子どもは生後10日目ごろから父親の背中に乗って移動するようになる。日中は木の洞穴などの中で過ごす。尿や分泌物を用いたマーキング行動が見られることから,排他的ななわばりをもつと考えられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨザル」の意味・わかりやすい解説

ヨザル
よざる / 夜猿
night monkey
[学] Aotus trivirgatus

哺乳(ほにゅう)綱霊長目オマキザル科の動物。ヨザル属は現在1種とされているが、より多くの種に分けるべきであるとの意見も多い。真猿類中唯一の夜行生活者で、大きな目をもつ。オマキザル科のなかでは小形で体重は1キログラム前後、頭胴長は30センチメートル内外。中央アメリカからアルゼンチン北部まで広域に分布する。熱帯多雨林以外のかなり多様な植生環境にも生息する。最近その生態がかなりわかってきた。主要な食物は果実であるが、葉、花、昆虫も食べる。大人の雌雄を各1頭ずつしか含まないいわゆるペア型の集団で暮らす。寝場所はツタの絡まったところや樹洞で、同じ寝場所を数週間も続けて使用する。

[西邨顕達]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨザル」の意味・わかりやすい解説

ヨザル
Aotes trivirgatus; durukuli; night monkey

霊長目オマキザル科。体長 25~50cm,尾長は体長にほぼ等しい。体重は 0.6~1kg内外。眼が大きくて丸く,眼の上に顕著な白色斑がある。毛は柔らかく,耳は毛の外に突出せず,フクロウを思わせる顔つきをしている。森林にすみ,小群で行動する。新世界ザル中唯一の夜行性のサルで,昼間は樹洞などにひそむ。雑食性で果実,カエル,昆虫類などを食べる。中央アメリカから南アメリカのアルゼンチンにかけて分布する。

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