ヨウ(沃)化銀(読み)ようかぎん

改訂新版 世界大百科事典 「ヨウ(沃)化銀」の意味・わかりやすい解説

ヨウ(沃)化銀 (ようかぎん)
silver iodide

化学式AgI。黄色固体。比重5.67,融点552℃,沸点1506℃。他のハロゲン化銀と異なり,高圧でのみ塩化ナトリウム型構造をとるが,常圧では多形を示す。α形は常温で安定でセン亜鉛鉱型(立方晶系,格子定数a=6.48Å)である。137℃に転移点がありウルツ鉱型β形となる。β形は六方晶系,a=4.59Å,c=7.52Åである。I⁻を過剰の条件でAgIを沈殿させると常温でも準安定状態のβ形が得られるが,これをこするとα形に変わる。146℃以上では立方晶系のγ形に変化する。この構造ではI⁻が立方体(1辺の長さ5.03Å)の頂点と中心に位置し,一方,Ag⁺は格子中に無秩序に分布するという無秩序構造をとっている。Ag-I原子間距離はα形で2.80Å,β形で2.78Å(常温)であるのに対し,γ形では2.52~2.86Å(146℃)の変動を示している。光に当たるとゆっくりと銀を析出し,黒化するが,臭化銀より光に敏感でない。水に対する溶解度2.5×10⁻3mg/l,溶解度積1.1×10⁻16mol/l2シアン化カリウム,濃ヨウ化物溶液に[Ag(CN2]⁻,[AgI2]⁻などの錯イオンを生成して溶ける。臭化銀と混合して感光材料に用いられる。また,氷晶核生成助長剤として空中散布される(人工降雨)。
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百科事典マイペディア 「ヨウ(沃)化銀」の意味・わかりやすい解説

ヨウ(沃)化銀【ようかぎん】

化学式はAgI。 比重5.67(γ型),融点552℃,沸点1506℃。銀に直接ヨウ素蒸気を作用させるか,銀塩の水溶液にヨウ化アルカリを加えると沈殿として得られる結晶室温では黄色のγ型が安定で,137℃以上では緑黄色のβ型,146℃以上では暗褐色のα型となる。水,アンモニア水に難溶,酸に不溶,チオ硫酸ナトリウム水溶液に可溶感光性があり(感光波長域は紫外部〜約480nm),光で分解して暗色となる。乾板フィルムなどの写真乳剤として臭化銀とともに利用,また人工降雨の凝結核などにも用いられる。

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