ユビナガコウモリ(読み)ゆびながこうもり(英語表記)bent-winged bat

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユビナガコウモリ」の意味・わかりやすい解説

ユビナガコウモリ
ゆびながこうもり / 指長蝙蝠
bent-winged bat
[学] Miniopterus schreibersi

哺乳(ほにゅう)綱翼手目ヒナコウモリ科の動物。虫食性の種で、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアに分布し、日本では北海道と伊豆七島を除き、本州四国、九州およびその属島海食洞洞窟(どうくつ)に生息する。前肢の第3指(中指)の第2指骨が著しく長いので、この名がある。前腕長46ミリメートル前後、頭胴長65ミリメートル前後、尾は体とほぼ同長で、頭が小さく耳介も短い。翼は細く、幅が狭い。翼を畳むとき、第3指の第2指骨を前方に折り曲げる。飛翔(ひしょう)力が強く、アマツバメのように高速で高空を飛ぶ。数千頭、ときに1万頭に及ぶ大群をつくる。繁殖期は冬眠に入る前の秋で、交尾に続いて、排卵受精がみられる。冬眠中は受精卵の発生が遅く、受精卵はいわゆる「遅延着床」型で、子宮への着床が遅れる。冬眠から覚める春に発生が急速に進む。妊娠期間は約260日、出産期は6月中旬から8月上旬で、1産1子を産む。生まれた子は、新生子だけで集団を形成する。主食はカ、ガ、トビケラなどである。

吉行瑞子]


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改訂新版 世界大百科事典 「ユビナガコウモリ」の意味・わかりやすい解説

ユビナガコウモリ (指長蝙蝠)
bent-winged bat
Miniopterus schreibersi

翼手目ヒナコウモリ科の哺乳類。虫食性のコウモリで,前肢の第3指(中指)の第2指骨が著しく長いので,この名がある。ヨーロッパ南部,アジア,オーストラリアに広く分布し,日本では北海道,伊豆七島をのぞく本州,四国,九州およびその属島にいる。前腕長47~48mm,頭胴長60~67mm。頭が小さく,耳介も短い。いっぽう翼は細く,幅が狭い。翼をたたむとき,第3指の第2指骨を前方に折り曲げる。飛翔(ひしよう)力が強く,アマツバメのように高速で高空を飛ぶ。海食洞や洞窟に数千,ときに1万頭におよぶ大群をつくる。出産期は6月中旬から8月上旬で,1産1子。出産後,新生子だけで集団を形成する。昆虫食で主食はカ,ガ,トビケラなどである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユビナガコウモリ」の意味・わかりやすい解説

ユビナガコウモリ
Miniopterus schreibersi; bentwinged bat

翼手目ヒナコウモリ科。体長5~7cm,前腕長4~5cm。第3指の第2指骨が著しく長いのでその名がある。耳は丸く,皮膜は細長い。体の色は暗褐色。高空を高速で飛ぶ。普通,洞窟の天井などに後肢でぶらさがり,休止するときは皮膜を内側に折り曲げる。海食洞,鍾乳洞などに 500~1000頭,ときには1万頭ほどの大群ですむ。本州,四国,九州,南西諸島,中国,朝鮮半島,ヨーロッパ南部,小アジア,オーストラリア,ニューギニアなどに広く分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のユビナガコウモリの言及

【コウモリ(蝙蝠)】より

…昼は洞窟の壁の割れ目,人家の天井裏や屋根瓦の下,壁の間,樹洞およびタケの割れ目などに入ったり,あるいは洞窟や廃坑の天井,大木の枝などにぶら下がって休息する。ユビナガコウモリのように海食洞に何千もの大群をなすもの,コテングコウモリのように単独または数頭で生活するものなどがある。いずれも鳥やネズミのような巣をつくらないが,シュロの葉をかじって折り,テントのようなおおいをつくってねぐらとするものもある。…

※「ユビナガコウモリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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