ユネスコエコパーク(読み)ゆねすこえこぱーく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユネスコエコパーク」の意味・わかりやすい解説

ユネスコエコパーク
ゆねすこえこぱーく

生物多様性の保全持続可能な開発、学術研究を目的として、1976年にユネスコ国連教育科学文化機関)が開始した制度。英語ではBiosphere Reserves(生物圏保存地域)とよばれ、「エコパーク」は、日本での通称である。

 1971年に発足したMAB計画(Man and the Biosphere Programme、人間と生物圏計画)に基づき、自然の保全と利用を図る目的で、登録地が制定されている。

 「人間の干渉を含む、主要な生物地理学地域を代表する生態系を包含すること」「生物多様性を保存するうえで重要な地域であること」などが登録基準となっており、ユネスコMAB国内委員会により候補地がユネスコMAB委員会に提出され、専門家が検討結果を諮問し、登録の可否が判断される。

 世界遺産(自然遺産)が「保護」を第一の目的としているのに比し、エコパークでは、保全のほか、開発や研究が同様に大きな目的となっているのが大きな違いである。しかし実際には世界遺産とエコパークの両方に登録されている地域もある。

[佐滝剛弘 2021年2月17日]

 2019年6月時点の登録件数は、124か国で701件。日本の登録件数は同時点で以下の10件である。

志賀高原(群馬県、長野県)
登録年:1980年(昭和55) ※2014年に拡張
白山(はくさん)(富山県、石川県、福井県、岐阜県)
登録年:1980年 ※2016年に拡張
大台ヶ原(おおだいがはら)・大峰山(おおみねさん)(三重県、奈良県)
登録年:1980年 ※2016年に拡張
屋久島(やくしま)(鹿児島県)・口永良部島(くちのえらぶじま)
登録年:1980年 ※2016年に拡張
●綾(あや)町(宮崎県)
登録年:2012年(平成24)
只見(ただみ)(福島県)
登録年:2014年
南アルプス山梨県、長野県、静岡県)
登録年:2014年
●みなかみ(群馬県、新潟県)
登録年:2017年
祖母・傾(かたむき)・大崩(おおくれ)(大分県、宮崎県)
登録年:2017年
●甲武信(こぶし)(埼玉県、東京都、山梨県、長野県)
登録年:2019年

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

事典 日本の地域遺産 「ユネスコエコパーク」の解説

ユネスコエコパーク

ユネスコエコパーク(Biosphere Reserves)は、生物多様性の保全、持続可能な開発、学術研究支援を目的として、1976(昭和51)年にユネスコにより開始された。ユネスコの自然科学セクターで実施されるユネスコ人間と生物圏(Man and Biosphere)計画における一事業。世界遺産は手つかずの自然を守ることを原則としているが、ユネスコエコパークは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和が目的。「保全機能」「経済と社会の発展」「学術的支援」の3つの機能をもつ地域を登録。登録総数は世界で114力国、580地域(2011年7月現在)。日本では1980(昭和55)年に屋久島、志賀高原、白山、大台ヶ原の4ヶ所が登録。2012(平成24)年、32年ぶりとなる綾ユネスコエコパーク(宮崎県綾地域)が登録され、計5ヶ所となった。2010(平成22)年日本ユネスコ国内委員会により、国内での呼称が「ユネスコエコパーク」とされている。
[選定機関] ユネスコ
[選定時期] 1976(昭和51)年~
[登録・認定名] 志賀高原ユネスコエコパーク | 白山ユネスコエコパーク | 大台ヶ原・大峯山ユネスコエコパーク | 屋久島ユネスコエコパーク | 綾ユネスコエコパーク

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報

知恵蔵mini 「ユネスコエコパーク」の解説

ユネスコエコパーク

ユネスコが制定する「生物圏保存地域」の日本での正式呼称。1976年、ユネスコの自然科学セクターで実施される「ユネスコ人間と生物圏」(MAB)の1事業として開始された。同じくユネスコが制定する世界遺産が保護・保全を目的としているのに対し、ユネスコエコパークは保護・保全に加え自然と人間社会の共生に重点が置かれている。2013年5月現在、登録件数は117カ国621件。14年6月12日、文部科学省は「只見」(福島県)と「南アルプス」(山梨、長野、静岡の3県)の新規登録が決まったと発表。日本のユネスコエコパークは、「志賀高原」「白山」「大台ヶ原・大峰山」「屋久島」「綾」に加え計7地域となった。

(2014-6-13)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android