ユウレイボヤ(読み)ゆうれいぼや

改訂新版 世界大百科事典 「ユウレイボヤ」の意味・わかりやすい解説

ユウレイボヤ (幽霊海鞘)
Ciona intestinalis

ホヤ綱ユウレイボヤ科の原索動物夜間にぼんやり光るようすからこの名がある。水温が0~30℃以上でも生活できるため,日本各地から世界各地に広く分布していて,内湾の養殖いかだ桟橋や船底に付着する。体は高さ7~8cmの円筒形で,後端で他物に付着する。体の外皮は淡黄色か透明な軟らかいゼラチン質なために体内の構造がすけて見える。筋膜体の各側には5~7本の著しい縦走筋帯がある。入水孔前端にあって管状にのび,出水孔は入水孔のやや後方に開いている。雌雄同体。1個体が1回に1000粒ほど産卵し,南日本では数ヵ月間も産卵が続くが,北海道や東北地方では夏の間のみである。他のホヤ類に比べて成長がとくに速く,南日本では卵から約1ヵ月で親になり,産卵するようになる。
ホヤ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユウレイボヤ」の意味・わかりやすい解説

ユウレイボヤ
ゆうれいぼや / 幽霊海鞘
[学] Ciona savignyi

原索動物門尾索(びさく)綱腸性目キオナ科の単体ボヤ。従来、日本のユウレイボヤ類はただ1種とされてきたが、最近の精査により、筋膜体の各側に普通6本の筋肉帯が縦走することなどの外見は酷似するが、内部形態の微細な差で明瞭(めいりょう)に区別できる2種、すなわち標記の種とカタユウレイボヤC. intestinalisとが生息することがわかった。交雑実験は成功していないので、両種は遺伝学的にも別種とみなしうる。北大西洋やオーストラリア周辺では後者だけであるが、日本のほかカリフォルニア沿岸やアルゼンチンには両種が共存し、ときに混生する。体は円筒形で、体長10センチメートル程度にまで急速に成長する。日本では両種とも夏に成熟するが、配偶子放出がユウレイボヤでは夜明けに、そしてカタユウレイボヤでは夕方におこる。両種とも、北海道を除く各地の内湾の構造物や船底などに群生する。なお、後者は北ヨーロッパではカレイ類の重要な餌(えさ)となっている。

[西川輝昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユウレイボヤ」の意味・わかりやすい解説

ユウレイボヤ
Ciona intestinalis

原索動物門尾索亜門ホヤ綱腸性目ユウレイボヤ科。体は高さ7~8cmの長い卵形で,下端は根のようになっていて,これで他物に固着する。上端には管状に伸びた入水孔が,そのやや下方には出水孔が開いている。体は淡黄色ないし透明の軟らかいゼラチン質で,これが夜間ぼんやり光るさまが幽霊に似ているということからその名がついた。約1ヵ月で親になり,卵を産むようになる。最も普通にみられるホヤの一つで,世界各地の内湾に分布する。

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