ヤード・ポンド法(読み)ヤードポンドほう(英語表記)yard-pound system

百科事典マイペディア 「ヤード・ポンド法」の意味・わかりやすい解説

ヤード・ポンド法【ヤードポンドほう】

長さにヤード,質量にポンド,時間にセカンド(秒)をとった英語圏諸国の計量単位系。1959年,各国まちまちの単位を統一し国際ヤード,国際ポンドを制定。以後はアメリカ測地フートを除き,統一された。さらに英国ではEC諸国との申合せなどから国際単位系への移行を決定,産業規格(BS)や学習用の教科書などは国際単位系へ改められたが,伝統的なヤード・ポンド法への執着が強く,現実には移行は困難とみられる。
→関連項目インチエーカーオンスガロン計量法スクループルストーンチェーン(単位)ドラム(単位)パイントバレルハンドレッドウェイトBTUファゾムファーロングプサイ(psi)ブッシェルフートペックペニーウェイトポンド(質量単位)マイルミル(単位)ヤードヤールロッド

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤード・ポンド法」の意味・わかりやすい解説

ヤード・ポンド法
やーどぽんどほう
yard-pound system

イギリス固有の単位系で、またアメリカなどアングロ・サクソン諸国とその旧植民地に用いられてきた。フート・ポンド法ともいう。基本単位として長さにヤード、質量にポンドをとる。工業分野では時間に秒をとるが、温度には華氏度をとる。体積はガロンであるが、その大きさはイギリス系とアメリカ系では大きく異なる。

 古代オリエントに発生したものが、ギリシアローマ時代を経て変化し、雑多な単位も混じってイギリスに入り定着した。したがってヤード・ポンド法は体系的に整った単位系とはいえない。エリザベス1世(在位1558~1603)のときに標準器がつくられてほぼ統一された。17世紀後半からイギリスの度量衡の標準設定の作業は、主として王立協会が行うようになり、1760年にも新しい標準器が真鍮(しんちゅう)でつくられた。この段階ではポンドには5760グレーンの金銀用のトロイポンドと、7000グレーンの常用ポンドの二つがあった。これらの原器は1834年国会議事堂の火災で焼失し、1855年ふたたび複製された。これが現在の帝国標準ヤードおよび帝国標準ポンドであり、これによって制定されたのが英国度量衡法である。1884年メートル条約に加盟して原器を受け取ると、商務省は国際度量衡局と協同で相互比較を行い、1メートルは39.370113インチ、1キログラムは2.2046223ポンドと決定し、これを法定換算値とした。なお1879年イギリスはトロイポンドを廃止したが、アメリカではなお用いられている。

 またイギリスのこのような統一以前にアメリカはじめアングロ・サクソン系諸国に渡ったものは、それぞれ多少の差をもつようになった。とくにガロンにはもとからエールガロンとワインガロンの2種があり、エールガロンのほうが大きく約4.546リットル、ワインガロンは約3.785リットルであるが、イギリスは1824年ワインガロンを禁止し、アメリカはこれをとってきた。そこで1958年アメリカおよびイギリス連邦諸国は協定して、科学技術の分野で用いる値として、1ヤードは0.9144メートル、1ポンドを0.45359237キログラムと決定した。これをそれぞれ国際ヤードおよび国際ポンドとよぶ。しかしガロンだけはその差があまりに大きいため統一できないでいる。現在のイギリスのガロンの定義は「華氏62度のときの水10ポンドの体積」で、アメリカは231立方インチである。日本は計量法施行法でアメリカ制を採用している。

 各単位の倍数および分数の進法は系統的でなく、名称もさまざまである。アメリカは多少これとは異なる。

[小泉袈裟勝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤード・ポンド法」の意味・わかりやすい解説

ヤード・ポンド法
ヤード・ポンドほう
yard-pound system

フート・ポンド法ともいう。イギリス・アメリカ系諸国で用いられる計量単位系。基本単位には,長さにヤード (yd) ,質量にポンド (lb) ,時間に秒 (s) ,温度にカ氏温度 (°F) を用いる。単位の大きさは諸国間で少し異なっていたのが 1959年に統一されて,1ヤード=0.9144m,1ポンド=0.45359237kgとなった。しかし,体積の単位ガロンやバーレルはなお不統一である。特有の熱量単位に英国熱量単位 (BTU ) がある。物理単位系のフート・ポンド絶対単位系では基本単位として長さにフート (ft) ,質量に質量ポンド (lbm) ,時間に秒をとり,力の単位にポンダルを用いる。またフート・ポンド重力単位系では基本単位として長さにフート,力にポンド力 (lbf) ,時間に秒をとり,質量の単位にスラグを用いる。ヤード・ポンド法は,古代エジプトからローマへ伝わった長さの単位ペス (かかとから爪先までの長さ) と質量の単位アース,リーブラ,ポンドゥスがヨーロッパ諸国に広がって発展したものである。しかし,これらの単位の大きさは国ごとに異なるだけでなく,各都市,各地方で少しずつ違い,年月を経るにつれて混乱が増大して商取引に支障をきたすようになった。そして,度量衡の統一のために革命下のフランスで 1799年に最初のメートル原器およびキログラム原器が生れた。メートル法は 19世紀のヨーロッパ大陸の諸国へ急速に広まった。ローマの度量衡法の子孫であるヤード・ポンド法は島国イギリスでは比較的統一された形で余命を保ち,その植民地アメリカなどへ広がったが,それらの諸国でもメートル法への転向が進んでいて,尺貫法を克服した先輩国である日本の経験に学んでいる。日本の度量衡法 (計量法) でも第2次世界大戦後にヤード・ポンド法が尺貫法,メートル法とともに3本立てで法定されていたことがあるが,1967年の計量法改定以降は特定の場合 (航空機の運航,輸出貨物の計量など) を除いては,その使用が法的には禁止されている。

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知恵蔵 「ヤード・ポンド法」の解説

ヤード・ポンド法

長さの基準をヤード、質量の基準をポンドとする度量衡システム。ヤードとポンドの定義は、SI単位との厳密な換算係数によって与えられている(1ヤード〈yd〉=0.9144 m、1ポンド〈lb〉=0.45359237 kg、1マイル〈mi〉=1.609 km)。

(今井秀孝 独立行政法人産業技術総合研究所研究顧問 / 2008年)

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