ヤコブ派(読み)ヤコブは(英語表記)Jacobites

改訂新版 世界大百科事典 「ヤコブ派」の意味・わかりやすい解説

ヤコブ派 (ヤコブは)
Jacobites

シリアで成立した単性論を奉じる一派。その教会は正式にはシリア正教会と呼ばれるが,6世紀の組織者ヤコブ・バラダイオスの名にちなんで一般にヤコブ派と称する。カルケドン公会議(451)の結果離反したシリアの単性論派は,たび重なる迫害にさらされ,独自の教会の形成がむずかしかったが,6世紀中葉になってヤコブ・バラダイオスの努力で教会の組織を整え,東方でネストリウス派と対抗しながら教勢を伸ばした。典礼用語はシリア語で,神学の水準も高かった。イスラム・カリフ王朝下にあって多少教勢が衰え,14世紀にモンゴル軍の侵入とともに衰退を始めた。18世紀にはカトリック教会と合同した一派(シリア・カトリックと呼ぶ)が分離した。現在ではダマスクスに総主教座を置き,中東各地とアメリカ大陸に分布している。なお,それとは別にインドに相当数のヤコブ派教徒がおり,その首長は東方カトリコスの称号を有する。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ヤコブ派」の解説

ヤコブ派(ヤコブは)
Jacobites

シリアの単性論キリスト教の一派。正しくはシリア正教会。6世紀中頃ニシビスの司教ヤコブ・バラダイオスによって創始され,現在も約20万の信徒を持つ。キリスト単性の信仰を表すため一指十字をきる。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヤコブ派の言及

【キリスト教】より

…インドのマラバル地方には4世紀にネストリウス派が渡来したが,16世紀末に布教したカトリック教会の弾圧にさらされ,教会が分裂した。ローマとの合同に従わなかった教派は,シリアの単性論派であるヤコブ派から主教を迎えたので,理論的にはネストリウス派を離脱したことになる。なお,カトリック教会渡来以前のインドのキリスト教徒をトマス派と総称するが,これにはネストリウス派以外のキリスト教徒もふくまれる。…

【ヤコブ・バラダイオス】より

…シリアの単性論派教会であるヤコブ派教会の設立者。ユーフラテス川上流地方の出身。…

※「ヤコブ派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android