ヤギ(腔腸動物)(読み)やぎ(英語表記)horny coral

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤギ(腔腸動物)」の意味・わかりやすい解説

ヤギ(腔腸動物)
やぎ / 海楊
horny coral
sea whip
sea fan
sea plume

腔腸(こうちょう)動物門花虫綱八放サンゴ亜綱ヤギ目Gorgonaceaの海産動物の総称個虫は羽状突起をもった8本の触手と8枚の隔膜とをもつ。すべて群体となり、群体の中心に角質あるいはそれに石灰質膠着(こうちゃく)した骨軸をもち、下端岩礁などに固着することによって八放サンゴ類のほかの目から区別される。18科約120属に属する多くの種が知られ、やや高緯度地方にも少数のものが生息するが、ほとんどの種は暖海の潮間帯より1000メートルの深海にまで分布する。とくにインド洋から西太平洋と西インド諸島の熱帯海域に多い。群体は一般に平面的な樹枝状分岐をし扇状となるが、なかにはまったく分岐をせずに鞭(むち)状となるもの、さらに膜状あるいは葉状となるものもある。骨軸上に共肉が厚く覆い、個虫は共肉中に埋まるか、あるいは共肉表面より突出している。個虫の胃腔は短く、共肉内に埋まり、骨軸中へは侵入しない。共肉内を骨軸に沿って走る主縦管が縦方向に個虫の胃腔を貫くほか、細い共肉内細管が網目状に走り、それぞれの胃腔を連絡する。有性生殖でできたプラヌラ幼生が岩礁に付着し、変態して1個のポリプをもったヤギとなり、それが出芽法による無性生殖で個虫を増やして大きな群体となる。

 この類は骨軸の性質によって二つの亜目に分けられる。すなわち、石灰質の骨片が角質様物質で膠着された骨軸をもつ骨軸亜目Scleraxoniaと、角質の薄片が層状に固着し、骨片を含まない骨軸をもつ全軸亜目Holaxoniaである。両亜目とも共肉部は多くの骨片を含み、皮部とよばれる。骨軸亜目には、骨軸が一続きで節がないウスカワヤギ科、ヒラヤギ科、サンゴ科などがあり、骨軸に節部と間節部が交互にあるイソバナ科、トクサモドキ科などがある。一方、全軸亜目には、骨軸に節がなく、骨軸がほとんど石灰化されず弾力のあるトゲヤギ科、フタヤギ科、フトヤギ科などがあり、骨軸に節がなく、強く石灰化するために弾力性のない骨軸をもつムチヤギ科、キンヤギ科、オオキンヤギ科などがあり、骨軸に節部と間節部が交互にあるトクサヤギ科がある。

[内田紘臣]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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