モータリゼーション(読み)もーたりぜーしょん(英語表記)motorization

デジタル大辞泉 「モータリゼーション」の意味・読み・例文・類語

モータリゼーション(motorization)

《「モータライゼーション」とも》自動車大衆化現象

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「モータリゼーション」の意味・読み・例文・類語

モータリゼーション

〘名〙 (motorization) 自動車が普及し、一般生活必需品となる現象。自動車の大衆化。自動車化。
※マイ・カー(1961)〈星野芳郎〉三「モータリゼーションが飽和状態にむかう過渡期

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モータリゼーション」の意味・わかりやすい解説

モータリゼーション
もーたりぜーしょん
motorization

自動車交通の発達のことをいう。アメリカでは、フォードが1908年にフォードT型を発表し、1913年に量産化が開始され、自家用乗用車が一般大衆に普及するようになった。ヨーロッパのモータリゼーションは1920年代後半からとみられている。日本に最初に自動車が入ってきたのは1899年(明治32)で、アメリカ製電気自動三輪車であった。しかし、日本の第二次世界大戦前におけるモータリゼーションは、交通政策が鉄道を中心としていたために十分発達しなかった。モータリゼーションの開花は第二次世界大戦後になってからであり、国民所得の上昇、高速道路の整備などによって、1965年(昭和40)ごろから自家用自動車交通が急速に発展した。しかし、大気汚染、交通混雑、騒音、エネルギー問題などの発生によって、自動車交通のあり方が国際的に問題となっている。さらに、日本では人口の高齢化によって高齢者ドライバーの事故の増大等が新たな問題となっている。

 これらの問題に対する最近の日本での取組みとしては、環境と調和のとれた安全な車社会の形成、利用者ニーズに対応した車社会の形成、高度道路交通システムの推進などが考えられている。環境と調和のとれた安全な車社会の形成としては、環境と安全に配慮した自動車交通の円滑化・効率化の推進、環境に優しい自動車の開発・普及の促進、排出ガス対策への取組み、自動車NOx法(「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域に置ける総量の削減に関する特別措置法」)への対応、騒音対策への取組み、省エネルギー対策への取組みなどがなされている。より安全な車社会を形成する取組みとしては、自動車の安全に関する技術基準の見直し、先進安全自動車Advanced Safety Vehicle(ASV)の開発推進、自動車ユーザーへの情報提供、自動車の点検整備サービスの多様化やユーザーの利便性向上、リコール制度の導入などが検討されてきた。このうちのリコール制度とは、自動車が設計または制作の過程に起因することにより、保安基準に適合しない場合または適合しなくなるおそれがある場合、法律に基づき自動車メーカーおよび輸入代理店が、その原因、改善方策等を国土交通大臣に届け、対象となる自動車を回収し、無料で修理するというもので、1997年(平成9)7月から実施されている。

 利用者ニーズに対応した車社会の形成では、宅配便などトラック輸送の効率化が進展してきた。その一方で高齢化社会になり、高齢者・障害者の公共輸送サービスの改善等は新たな課題となっている。

 高度道路交通システムIntelligent Transport System(ITS)の推進では、電子料金収受システムElectronic Toll Collection System(ETC)が普及してきた。ETCはいまや日本全国の有料道路で利用可能であり、2011年(平成23)の全国の高速道路での利用率は約86%である。これにより高速道路の渋滞原因の約30%を占めていた料金所での渋滞がほぼ解消されてきた。さらに、ETC専用IC(インターチェンジ)であるスマートICの導入や、ETCによる有料道路以外の駐車場での決済やフェリー乗船手続等への応用利用も可能となるなど、ETCを活用したサービスが広がりつつある。また、走行経路案内の高度化を目ざした道路交通情報通信システムVehicle Information and Communication System(VICS)対応カーナビゲーション等を取り付けた車も増えつつあり、渋滞状況や旅行時間等の道路情報がリアルタイムに提供されることで、ドライバーの利便性が向上している。さらに、最近では全国でITSスポットサービスが行われるようになってきた。これは道路に設置されたITSスポットと車のITSスポット対応カーナビゲーションとの間で高速・大容量通信を行うことで、広域な道路交通情報や画像をドライバーに提供し、決済、観光、物流などさまざまなサービスを実現するものである。

[木谷直俊]

『J・プーカー、C・ルフェーブル著、木谷直俊他訳『都市交通の危機』(1999・白桃書房)』『交通協会編『交通年鑑』各年版(交通新聞社)』『国土交通省編『国土交通白書』各年版(ぎょうせい。平成12年度版までは運輸省編『運輸白書』)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「モータリゼーション」の意味・わかりやすい解説

モータリゼーション

先進諸国などで自動車が単に輸送機関としてだけでなく,市民生活の中に入り込んできている文化的・社会的状態。自動車の大衆的普及は高度消費時代の象徴ともされているが,これにより旅行その他のレジャーから通勤に至るまで,自動車が活用され,〈マイカー〉という和製英語に端的に示されるように生活に密着する。個人の機動性が高まり活動範囲が拡大されるとともに,真の大量消費社会が出現する,とされる。これとともに道路交通をはじめとする都市問題,公害問題などが自動車を除外しては考えられなくなる。日本では1960年代からモータリゼーションの進行が著しいのに対し,環境整備の立遅れが目立っている。
→関連項目高度経済成長通運事業豊田英二パークアンドライド

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のモータリゼーションの言及

【自動車】より

…このようなエンジンおよび車体関係の基本的な技術開発は,ヨーロッパを中心として19世紀の終りころから20世紀の初めにかけて急速に進み,加えてファッション性の観点からスタイリングも重視しながら快適な自動車としての条件を整えていき,やがて大量生産と大衆化につながっていった。
[工業化と調和の時代]
 アメリカのH.フォードは,自動車の生産技術を飛躍的に発展させ,1908年に発表したT型フォードを翌年には流れ作業方式によって低価格で製造することに成功,ここに自動車の工業化とモータリゼーションの道が開かれた。A型からB型,C型という順序で試作モデルを次々とつくり続けたフォードは,20番目にしてようやく納得する自動車を完成した。…

※「モータリゼーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android