モーガン(Thomas Hunt Morgan)(読み)もーがん(英語表記)Thomas Hunt Morgan

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

モーガン(Thomas Hunt Morgan)
もーがん
Thomas Hunt Morgan
(1866―1945)

アメリカの遺伝学者、発生学者。ケンタッキー州レキシントン生まれ。1890年ジョンズ・ホプキンズ大学で博士号を得た。1904年にはコロンビア大学の実験動物学教授となり、実験発生学の分野で多くの業績をあげたが、1910年ごろよりその関心はしだいに遺伝学へと向けられていった。その発端は、飼育していたキイロショウジョウバエに白眼の突然変異を発見したことにあるといわれている。ショウジョウバエは突然変異がおこりやすく、世代を短期間に重ね、飼育も容易で、遺伝研究には最適の材料である。

 ショウジョウバエで数多くの交雑実験を行い、対立形質がいくつかの組合せをつくって遺伝する「連鎖法則」をみいだし、その組合せが染色体の対(つい)と同数であることから、メンデルが推定した遺伝因子は染色体上に線状配列するという遺伝子説を提唱した。さらに、染色体の交差によっておこる遺伝子の乗換え率の測定から、それぞれの遺伝子の染色体上の相対的位置を表す染色体地図を作製し、遺伝子説を確立した。このような研究成果に基づいて、近代遺伝学の理論を整理し、それに明解な表現を与えたのが、1926年に出版された『遺伝子説』である。遺伝において染色体の果たす役割を発見したことに対して1933年ノーベル医学生理学賞が与えられた。なお1928年からカリフォルニア工科大学の生物学部長となっている。

真船和夫

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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