モンガラカワハギ(読み)もんがらかわはぎ

改訂新版 世界大百科事典 「モンガラカワハギ」の意味・わかりやすい解説

モンガラカワハギ (紋殻皮剝)
clown triggerfish
Balistes conspicillum

フグ目モンガラカワハギ科の海産魚。色彩が豊かで美しいため各地の水族館で人気を集めている。南日本から東南アジア,オーストラリア東岸,インド洋沿岸,紅海,アフリカ東岸にわたり広く分布する。

 体は卵形側扁し,骨質のうろこでおおわれ,尾柄の側面には小棘(しようきよく)がほぼ2列に並ぶ。体の地色は黒いが,体側から腹側にかけて,やや大型の丸い黄色斑が3~4縦列をなし,背側と尾柄部には黄色の網目状の模様がある。口は小さく,上下両あごにそれぞれ8枚の歯があり,上あごにはその内側にさらに6枚の板状歯が並んでいる。口の周囲は鮮やかなオレンジ色で,その周辺を細い白線が縁どる。また,吻(ふん)の背側には両眼前方に達する鮮黄色の帯状斑がある。第1背びれは強固な3棘よりなり,ふだんは倒して背側正中線の溝に収めているが,その第1棘はとくに長くこれを立てたときには短い第3棘がその基部を支える。左右の腰骨は癒合(ゆごう)し,腹びれも左右が合一して1本の棘になり,腹面から突出しているが,その形が銃の引金に似ているので同科の魚にtriggerfish(引金魚)という英名がつけられた。尾びれは扇状で切れこみがない。全長40cm内外に達する。サンゴ礁岩礁性の浅海すみ,驚くと岩礁の割れ目に身を潜める。観賞魚とされる以外とくに用途はない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンガラカワハギ」の意味・わかりやすい解説

モンガラカワハギ
もんがらかわはぎ / 紋殻皮剥
[学] Balistoides conspicillum

硬骨魚綱フグ目モンガラカワハギ科に属する海水魚。南日本の各地と太平洋インド洋の熱帯域に広く分布する。体は楕円(だえん)形で側扁(そくへん)し、硬い板状の鱗(うろこ)に覆われる。尾柄部の鱗には数列に並ぶ小棘(しょうきょく)がある。第1背びれには3本の棘(とげ)があり、大きな第1棘を第2棘が支えて固定することができる。英名のトリガーフィッシュtrigger fish(引き金の意)は、第1背びれのこの構造に由来する。腹びれは単一の腰骨の後端にあり、小さく退縮した鰭条(きじょう)とこれを包む変形した鱗から構成される。体色は黒褐色の地に体側腹方に大きな白色円斑(えんはん)が数縦列に並び、第1背びれの周囲に黄色の網目状模様がある。口は橙(だいだい)色で、目の前方にも橙色の1横帯がある。体長は35センチメートルに達する。サンゴ礁に生息し、敵に襲われると穴に潜り込み、第1背びれと腹びれの先端を穴の壁面に押し付けて体を固定させる。肉は食べられるが市場価値はほとんどない。

[松浦啓一]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モンガラカワハギ」の意味・わかりやすい解説

モンガラカワハギ
Balistoides conspicillum; clown triggerfish

フグ目モンガラカワハギ科の海水魚。全長 50cmに達する。体は卵形,やや肥大し,尾鰭の後縁は円形。第1背鰭のとげは 3本。鱗は菱形で厚く,重なり合わずに敷石状に並ぶ。体色は黒褐色で,腹部には大きい淡青白色斑がある。高価な観賞魚として知られるが,なわばり行動が激しいので,複数で飼うのは難しい。相模湾以南,インド・太平洋の熱帯海域に分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のモンガラカワハギの言及

【熱帯魚】より

…餌は魚などの肉も食べるが,コイやキンギョ用のペレットもよく食べる。(e)モンガラカワハギBalistes conspicillum 本州中部以南,オーストラリア,紅海,メキシコに分布。全長40cm。…

【熱帯魚】より


[海水魚]
 姿,色彩ともに淡水魚より優美なものが多い。日本で入手の容易な種類は,沖縄からフィリピンにかけて分布するもので,スズメダイ類では,コバルトスズメ,ミスジリュウキュウスズメ,ミツボシクロスズメ,クマノミ,ハマクマノミ,カクレクマノミなど,チョウチョウウオ類では,チョウチョウウオをはじめ,トゲチョウチョウウオ,イッテンチョウチョウウオ,フウライチョウチョウウオ,フエヤッコダイなど,ベラ類ではカンムリベラ,ツユベラなど,その他,ハナミノカサゴ,モンガラカワハギ,ツノダシなどがある。 以上のうちスズメダイ類は小型で飼いやすい。…

※「モンガラカワハギ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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