モル・ファン・ダスホルスト【Anthonis Mor van Dashorst】
1517ころ‐75ころ
オランダの肖像画家。ユトレヒトに生まれ,アントワープで没。皇帝カール5世(スペイン国王カルロス1世),フェリペ2世,スペイン領フランドルの総督アルバ公に仕えた。鋭い心理描写を特徴とする,強烈なレアリスムによる重厚な作風は,サンチェス・コエリョに影響を与え,スペイン肖像画の基礎を築いた。スペイン名はモロAntonio Moro。【神吉 敬三】
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
世界大百科事典内のモル・ファン・ダスホルストの言及
【オランダ美術】より
…こののち同じようにイタリア,特にローマに遊学して古代とルネサンスの成果を吸収しようとした〈ロマニスト〉と呼ばれる画家たちが続出するが,一般的に言って彼らを中心とする16世紀のオランダ美術はイタリアの理想性とネーデルラント本来の写実性のいずれをも十分に発揮できず,両者の統合という重要な課題は達成できなかった。そうした情勢の中で自己の個性を確立しえた画家としては,スペインを中心に各国の宮廷で活躍し公的肖像画の一範例を形成したモル・ファン・ダスホルストAnthonie Mor(o) van Dashorst(1512‐76),宗教主題を扱いつつも風俗的要素のなまなましい描写によって17世紀フランドルへの道を開いたアールツェンの名が挙げられる。16世紀後半は宗教的・政治的動揺のため美術活動は全般的に不振で,聖像破壊運動によってこの時期に失われた作品も数多い。…
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