フランスの分子生物学者。生物の示す合目的性に興味をひかれ,1937年ころより大腸菌の生育と適応的酵素合成の研究を始める。第2次世界大戦中はドイツ占領下の抵抗組織に参加する。45年パスツール研究所に入り,ルウォフAndré Michael Lwoff(1902-94)のところで再び大腸菌のβ-ガラクトシダーゼ生成の研究にとり組み,51年酵素は誘導物質の存在により,代謝とは無関係に誘導されることを見いだした。59年にはパーディーArthur Beck Pardee(1921- ),ジャコブFrançois Jacob(1920- )とこの大腸菌の酵素誘導の遺伝的解析を行い(パジャマ実験),その結果などから61年ジャコブとともにオペロン説を提出した。これはタンパク質合成の遺伝子レベルでの制御機構を示すものであった。また同年ジャコブとDNAの情報を伝えるものとしてメッセンジャーRNA仮説を出している。次いで63年,酵素合成を制御するアロステリック効果の概念を導入し,遺伝子レベルの制御だけでなく,タンパク質分子の構造変化による調節作用が存在することを示した。65年,ジャコブ,ルウォフとともにノーベル医学・生理学賞を授与された。71年パスツール研究所長。彼の思想を表明した著作《Le hasard et la nécessite》(1970。邦訳《偶然と必然》)は大きな反響をよんだ。
執筆者:石館 三枝子
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ギリシア語に由来する数詞1を表す接頭語.モノクロロ酢酸などの名称もあるが,命名規則では原則としてモノは省略してクロロ酢酸などとする.むしろ,モノアミン,モノテルペンなどの一般名に使われている.
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出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
…1960年代のはじめに,フランスの生化学者J.モノらが提唱した生体制御の分子的機作の概念。アロalloは異なる,ステリックstericは立体構造が,という意味で,以下に述べるいくつかの具体的な実験事実の解釈として,特定の酵素の活性が,その基質となる化合物と立体構造(化学構造)上の類似性に乏しい特定の生体物質によって調節される現象を想定している。…
…
[多様化する遺伝子の概念]
遺伝子の本体や作用機構に関する研究と並んで,その作用の調節機構も研究されるようになった。F.ジャコブとJ.モノー(1961)らの研究から構造遺伝子の作用は作働遺伝子や促進遺伝子の働きにより調節されていることがわかってきた。大腸菌のLac遺伝子の場合,その作働遺伝子は他の構造遺伝子が生産するタンパク性抑制物質の結合部位であり,促進遺伝子は転写をつかさどるRNAポリメラーゼの結合部位である。…
…分子生物学の成立と発展により,生命を物質現象として追究する道はますます広く開けかつ深く進んでいるが,それにともない科学的成果と論者の思想的立場との交錯から,各種の生命観的議論がまた新たに生じている。そのなかでJ.モノの著作《偶然と必然》(1970)は著者独自の機械論的見解を述べたものとしてとくに議論の対象になった。 現代生物学(医学などを含め)では生物一般および人間の生命がすでに広範に操作の対象になっており,生命操作の倫理の確立が重要な課題として提起されている。…
…タンパク質が固有のアミノ酸配列をもち,特異な機能を発現する前提として,タンパク質が遺伝情報をもとにいかにして合成されるかという基本問題が次なる研究課題となった。1961年にフランス・パリ学派のF.ジャコブとJ.モノーがオペロン説を提唱し,酵素の誘導合成の遺伝的調節の様式が示され,分子生物学は一つの頂点に立った。ついで,メッセンジャーRNA,転移RNA,リボソームなどタンパク合成に関与する主要因子が明らかになる過程で,クリックなどによって遺伝暗号が解かれ,遺伝情報発現のセントラル・ドグマが確立した。…
…このような動向は,20世紀に入って,サイバネティックスの出現による〈機能〉の概念の大幅な拡張が,また分子生物学の発展による生命現象の解明の飛躍的な進歩によって,いっそう促進されたといえる。分子生物学者のJ.モノは,従来目的論的なものとみなされていた生命の複製や自動調整の機能をすべて機械的に解き明かし,生命の発生を偶然に帰せしめる思考の方向を示唆して,偶然の概念と目的論のかかわりについての新たな解決を試みている。とはいえ,以上のような生物学を主とする自然科学の動向で,旧来の目的論をめぐる問題にすべて片がついたわけではない。…
※「モノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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