モトローラ(読み)もとろーら(英語表記)Motorola, Inc.

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モトローラ」の意味・わかりやすい解説

モトローラ
もとろーら
Motorola, Inc.

アメリカの通信機器・半導体メーカー。2011年1月、モトローラ・モビリティMotorola Mobility, Inc.とモトローラ・ソリューションズMotorola Solutions, Inc.に分社化された。1928年にイリノイ州シカゴで設立されたバッテリー・エリミネータ(当時の電池駆動のラジオを家庭用電源で利用するための装置)を生産するガルビン・マニュファクチャリングGulvin Manufacturing Corp.が前身。1930年に自動車用ラジオの生産を始め、「動きMotion」と「ラジオRadio」という語を組み合わせた「モトローラ」という製品名が創立者のポール・ガルビンPaul V. Galvin(1895―1959)によって名づけられる。のちにその市場で大きなシェアを占め、1947年に社名をモトローラとした。

 その後は、無線通信や衛星通信の基盤となる製品やその他各種のエレクトロニクス製品、組み込み用の半導体や制御システムなどを開発した。1998年の部門別売上高構成比率をみると自動車電話や携帯電話などのセルラー製品が42%と高い。地域をセル(=細胞)で分けて電波を送受信する通信システムであるセルラー方式の無線電話は世界的に普及し、同社は合弁形態をとって海外の16市場でセルラー式電話システムを販売、設置した。アナログとデジタルの双方向音声・データ製品を供給するランド・モービル製品部門は18%を占めた。携帯用小型無線呼び出し機、有線・無線データ通信製品、モデムなどを製造・販売するのは売上構成比率9%のメッセージ・情報・メディア製品部門であった。モトローラは情報システムと通信機器の生産・販売会社として有名であったが、半導体の生産・販売でも世界的に伸張し、セルラー製品の売上げに次ぎ19%を占めた。また、同社は政府向けの電子システム・製品を供給しており、アメリカの軍事システムの一翼を担う企業ともなった。日本では、1975年(昭和50)に日本モトローラ(現モトローラ)が設立されている。

 1999年に半導体製造部門の一部をスピンオフ(分社化のこと。オン・セミコンダクター社On Semiconductor Corp.となる)させ、さらに2004年に残りの半導体製造部門もスピンオフ(フリースケール・セミコンダクター社Freescale Semiconductor, Inc.となる)させた。2004年に発売を始めた薄型携帯端末RAZR(レーザー)シリーズが爆発的にヒットし、しばらくノキアに次ぐシェアを占めたが、その後低迷し、2008年3月には携帯電話部門と通信ソリューション部門の分社化を発表。2008年の売上高は301億4600万ドルであったが、欠損は42億4400万ドルに上り、その過半は携帯端末事業の不振に由来する。

[萩原伸次郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モトローラ」の意味・わかりやすい解説

モトローラ
Motorola, Inc.

アメリカ合衆国のエレクトロニクス製品メーカー。1928年ガルビン・マニュファクチュアリングの名称で設立され,エリミネータ製造会社として発足。1930年代に安価なカーラジオ「モトローラ」の販売を開始,1937年に家庭用ラジオにも進出,第2次世界大戦中は軍用トランシーバを生産。1947年社名をモトローラに変更。戦後はテレビジョン受像機メーカーとして成長しつつ関連企業を数多く買収して多角化をはかった。1950年代後半から半導体の分野に進出し,アメリカ国内市場最大のシェアを誇った。また,1977年セルラー方式の携帯無線電話機を開発し,1980年代以降は携帯電話事業で大成功を収めた。海外活動も活発で,各国で生産するとともに販売活動を展開。半導体をはじめセルラー基盤や無線電話装置を製造する事業を主力に,携帯用小型無線呼出機,有線・無線データ通信製品,モデムなどを扱う情報通信・メディア事業,アナログ・デジタル双方向音声・データ製品を扱う製品事業を展開した。株式の 25%を保有するイリジウムが 1997年通信衛星を打ち上げ,1998年世界中どこからでも通信ができる衛星携帯電話サービスを開始したが,利用者数が伸びず事業は破綻。以降,半導体部門,防衛システム部門などを売却し,主力の携帯電話事業も低迷した。2011年おもに携帯電話事業を行なうモトローラ・モビリティと,そのほかの事業を行なうモトローラ・ソリューションズに分割された。

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