モツゴ(読み)もつご

改訂新版 世界大百科事典 「モツゴ」の意味・わかりやすい解説

モツゴ (持子)
Pseudorasbora parva

コイ目コイ科の淡水魚。イシモロコ(琵琶湖沿岸),クチボソ(東京),オボソ(霞ヶ浦沿岸)などとも呼ばれる。和名のモツゴは高知県の方言に由来。自然分布は日本,台湾朝鮮半島および沿海州から華南までのアジア大陸東部一帯。日本での分布は関東以西の本州,四国および九州であったが,最近では東北地方や北海道の一部にも繁殖している。また東欧ルーマニアでも1960年ころより繁殖が記録されているが,これはアジア地域からの移殖によると思われる。平野部の河川,池沼またはこれに続く水路などにすむ。都会庭園の池などにもよく見られ,水質の汚染に比較的強い。浅所にすみ雑食性。口は吻端(ふんたん)にあって小さく,下あごは上あごよりも突出し,口ひげはない。側線は完全。全長は雄6~11cm,雌5~8.5cm。産卵期は3~7月で,水草の茎,水底の石や貝殻などに産卵する。産卵行動は1対の雌雄で行われるが,雄は数回にわたって熟卵をもった雌を次々と誘って産卵させ,産着卵を守る。したがって産卵場には発育期の異なる卵群が同時に1ヵ所に見られる。すずめ焼きなどにして食用。冬は美味。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モツゴ」の意味・わかりやすい解説

モツゴ
もつご / 持子
[学] Pseudorasbora parva

硬骨魚綱コイ目コイ科に属する淡水魚。イシモロコやクチボソともよばれる。新潟県と関東地方以南の本州、四国、九州と、ロシア連邦沿海州、朝鮮半島、中国に分布していたが、近年は北海道の一部や東北地方でも繁殖している。全長10~13センチメートル程度で、口は小さく受け口状、側線は完全である。湖沼や池、細流の泥底部に多くみられ、浮遊動物、底生動物や水草に付着している藻類、小動物など幅広く摂食する。春から夏に雄は石や貝殻などとその周辺を清掃して、縄張りテリトリー)とし、雌に卵を産み付けさせ、その卵群を保護する。

 近縁種のシナイモツゴP. pumilaは、側線が不完全。北海道、東北地方、東海地方に分布するが、東海地方のものを別亜種ウシモツゴとみなす人もいる。両種とも案外に美味であるが、肝吸虫の中間宿主でもあるので、加熱したものを食べるように注意が要る。

[水野信彦]

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百科事典マイペディア 「モツゴ」の意味・わかりやすい解説

モツゴ

コイ科の魚。地方名クチボソ,ヤナギジャコなど。全長雄6〜11cm,雌5〜8.5cm。地色は黄褐色だが,鱗の一部が黒褐色のため,全身斑に見える。関東以西〜朝鮮半島,台湾,アジア大陸東部に分布。平野部の浅い池や細流にすむ。すずめ焼として食用にするほか,飼い鳥の餌などにもする。都会の庭園などの池にも多く,水質汚染に比較的強い。
→関連項目ハヤ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モツゴ」の意味・わかりやすい解説

モツゴ
Pseudorasbora parva

コイ目コイ科の淡水魚。全長6~11cm。体は細長い紡錘形でやや側扁し,口は小さくやや受け口となっている。口ひげはない。体側の各鱗の後縁には三日月形の黒褐色紋があり,体表はこの紋でおおわれる。地色は黄褐色でやや金属光沢をもつ。側線は完全。繁殖期の雄は全身黒みを帯び,体側は紫色になり,吻部に数個の円錐形の追星が現れる。アジア大陸東部に分布するが,日本では関東地方以南の平野部の湖沼,河川,溝などにすむ。食用。

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