日本大百科全書(ニッポニカ) 「モダン・タイムス」の意味・わかりやすい解説
モダン・タイムス
もだんたいむす
Modern Times
アメリカ映画。1936年作品。38年(昭和13)日本公開。製作・脚本・監督・主演・伴奏音楽作曲チャールズ・チャップリン。タイトル・バックは時計の文字盤。現代の人間が時計に支配され、労働者はあたかも機械の一部分のごとくベルトコンベヤーから流れる商品に向かって同じ労働を繰り返す。人間性はすでになくなっている。チャップリン扮(ふん)するチャーリーは気が狂い入院。退院するや職を失い、同じく父と死別の孤児の娘と協力して働き口を探す。娘がレストランのダンサーとなり、彼女の助けで給仕人になるが、歌を歌えと主人に命じられ、歌詞をカフスに書き込むが、飛び出した瞬間それを失い、世界に通ぜぬ即興の「ことば」で歌う。サイレントに固執したチャップリンは、ここでも台詞(せりふ)のないサウンド版として発表したが、上記の一か所だけで処女作以来初めて画面から「声」を発した記念的作品。共演は彼の三度目の結婚相手のポーレット・ゴダード。資本主義社会への風刺、トーキーへの皮肉をも込め、工場、デパート、囚人生活、あらゆる現代社会をみせながら、その風刺は厳しい。
[淀川長治]