メートル原器(読み)メートルゲンキ(英語表記)prototype meter

デジタル大辞泉 「メートル原器」の意味・読み・例文・類語

メートル‐げんき【メートル原器】

1メートルの長さを示す標準器として用いられた、白金イリジウム製のX形断面をもつ棒状物体。30本が作られ、1889年にそのうち1本が国際メートル原器に指定された。1960年以後はメートルの定義が変わり、現在は国際度量衡局に保存されている。→メートル国際原器

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精選版 日本国語大辞典 「メートル原器」の意味・読み・例文・類語

メートル‐げんき【メートル原器】

〘名〙 メートル法基本単位、メートルの長さを示すため作られた物差白金約九〇パーセント、イリジウム一〇パーセントの合金製。メートル条約に基づいて作られたもので、加盟国は同形同質製の各国原器を保有し基準とした。一九六〇年以降、メートルの定義変更で使用されなくなり、パリの国際度量衡局に保管されている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メートル原器」の意味・わかりやすい解説

メートル原器
メートルげんき
prototype meter

メートル法の長さの単位メートルを定義する人工基準器。 1960年にメートルの定義改正によってその本来の意義を失った。この国際メートル原器は白金-イリジウム合金製の線度器であって,国際度量衡局に保管されている。曲りが最小であるように設計されたX形断面をもつ棒の中立面上の両端近くに刻まれた各3本線の中央線間の距離 (0℃における) で 1mが定義されていた。 1799年パリの科学アカデミーは7年に及ぶ精密測量の成果として,パリを通る子午線の1象限の 1000万分の1の長さを 1mと定め,最初のメートル原器として,この長さの白金製の端度器を作製してアルシーブ (記録保存所) に保管した。この原器はアルシーブ原器と呼ばれている。 1875年メートル条約に伴って新しい原器が作られることになり,摩滅しやすい端度器を避けて線度器が採用された。当時すでにアルシーブ原器が子午線による定義に比べて 0.2mmも短いことが知られていたが,この原器から新原器が作られることになった。 1879年に作製された白金-イリジウム合金製の多数の新線度器のなかから,線間の長さがアルシーブ原器に最も近い線度器が国際メートル原器に指定され,1889年第1回国際度量衡総会で承認された。証器として国際度量衡局に保管される数個以外の原器はメートル条約加盟国に配布されて各国原器とされた。日本国メートル原器は No.22と呼ばれ,産業技術総合研究所計量標準総合センターに保管されている。しかし,1960年総会において「メートルは,クリプトン 86原子の準位 2p10 と 5d5 との間の遷移に対応する光の真空中における波長の 165万 763.73倍に等しい長さである」との定義が自然の基準に準拠されることになり,経年変化が検知されるまでには 1000年以上かかると推定されていた原器はわずか 71年で原器の地位を去って副次的なものとなった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メートル原器」の意味・わかりやすい解説

メートル原器
めーとるげんき

1790年、国際統一単位制度を設けようというフランス国民議会の決議により、パリ科学学士院が測量した地球子午線の長さに基づいてつくられた標準尺。この製作は二段階に分かれる。1799年、6か年を要した子午線測量の結果に基づいて、純白金製の板状原器がつくられ、これが共和国文書保管所Archives de Républiqueに保管された。このためこの原器をメートル・デ・ザルシーブMètre des Archivesつまり「文書保管所の原器」とよぶ。

 その後1870年フランスの呼びかけによって開かれた国際会議は、この原器を基礎にして新しいメートル原器をつくることを決議し、さらに1872年の会議で原器の材料、形状などを決めた。この結果1889年に31本の原器が完成し、このうちNo.6というのが文書保管所の原器と一致したので、これが国際メートル原器とされた。他の原器はメートル条約加盟国に配られたが、このうちNo.22が日本の原器となった。

 原器の材料は白金90%、イリジウム10%の合金で、X形の断面をもち、全長102センチメートル、中立面の両端付近に3本の目盛り線をもち、その中央線間の長さでメートルを示す。1960年、メートルが光の波長で定義されて、第一次標準の地位を譲った。日本のメートル原器は、2012年に重要文化財に指定された。

[小泉袈裟勝・今井秀孝]

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改訂新版 世界大百科事典 「メートル原器」の意味・わかりやすい解説

メートル原器 (メートルげんき)
Prototype Metre

メートル法の長さの旧標準器。メートル法を国際化のために1870年と72年に開かれた国際メートル委員会の決議に基づいて79年に製作され,89年の第1回国際度量衡総会で長さの国際原器として承認されたものさしである。耐食性と堅牢性をもたせるために10%のイリジウムを含む白金イリジウム合金で作られた,長さが1020mm,高さと幅がともに20mmの棒状の線度器で,その断面は剛直性,温度順応性,経済性の追究からX字に近いH形をしている。その形状を考案者にちなんでトレスカTreskaの断面という。棒の中立面の両端近くに1対の小判形の研磨面があり,おのおのに長さを定めるための標線が3本ずつ刻まれている。この棒を定められた条件を満たすように置いたとき,各中央の標線の間の距離が,氷の溶けつつある温度で1mであると定義されていた。この原器による複製原器の器差づけ精度は1×10⁻7程度であり,科学,技術の要求する精度に達しなくなったため,1960年の国際度量衡総会はメートル原器に基づくメートルの定義を廃止し,光の波長による定義を採用した。このためメートル原器は長さの標準器ではなくなったが,従来どおり国際度量衡局に保管されている。
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百科事典マイペディア 「メートル原器」の意味・わかりやすい解説

メートル原器【メートルげんき】

メートルを表示する標準尺。白金90%,イリジウム10%の合金で,曲げを防ぐため断面はX字形,両端近くの3本の目盛線のうち中央線の間の距離が0℃で1mになる。国際メートル原器は国際度量衡局に保管,日本に交付されたNo.22の原器は通産省工業技術院計量研究所にある。メートルが光の波長で定義されるようになってからは原器の意義は減少。→メートル条約
→関連項目原器

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