日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
メンフィス(古代エジプト)
めんふぃす
Memphis
古代エジプトの首都。カイロの南約30キロメートルに位置する。紀元前3000年ごろエジプトを統一したメネス王は、地形的に上(かみ)エジプトと下(しも)エジプトの境をなす地点に王城を築いた。やがてこれは古王国時代の首都となった。メンフィスという名称は、近くにある第六王朝のピラミッド「メン・ネフェル」に由来する。メンフィスの主神はプタハであり、その神殿「ヘト・カ・プタハ」は全国土をさすギリシア名のアイギュプトスAigyptosを生み、それがエジプトという名称を生んだとされる。古王国時代の王と貴族はその近くに墓を築いた。サッカラの墓地はその代表。中王国時代以降、首都はリシュト、テーベ、タニス、アレクサンドリアと移っていったが、メンフィスはつねに第一級の都市としての重要性をもち続けた。メンフィスを含む、ギゼーからダハシュールまでのピラミッド地帯は1979年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[酒井傳六]