ムンダ諸語(読み)ムンダしょご(英語表記)Munda

改訂新版 世界大百科事典 「ムンダ諸語」の意味・わかりやすい解説

ムンダ諸語 (ムンダしょご)
Munda

インド中部ムンダ族(約600万人)の言語アウストロアジア語族の一大分派であるが,接尾語の使用,時制・数などによる語形変化,3音節以上の語の存在,語順が主語+目的語十動詞で後置詞を使用するなど,同語族に属する他の言語とは異なる特徴を有し,最も早い時期に分派,かつ同地域の他語族の言語の影響を強く受けたものと考えられる。固有の文字は有さない。

 北,南,西の三つの語群に分類され(ディフロスG.Difflothによる),おもな言語は次の通りである。(1)北ムンダ語派North Munda コールク語,サンターリー語Santali,ムンダーリー語Mundari,アスリー語,ブミジュ語,ビルホル語,ホー語Ho,コーダ語,コールワ語,トゥーリ語。(2)南ムンダ語派South Munda カーリア語,ジュアン語,ソーラ語,ゴルム語,ゲタ語,グトブ語,レモ語。(3)西ムンダ語派West Munda ナハーリー語
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百科事典マイペディア 「ムンダ諸語」の意味・わかりやすい解説

ムンダ諸語【ムンダしょご】

ムンダ人の言語。コール語とも。話し手は約700万人で,インドの先住民末裔と考えられており,インド北部から中部にかけて分散している。東部群,西部群に分類され,前者に属するサンターリー語が最も有力。固有の文字はない。→アウストロアジア語族

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世界大百科事典(旧版)内のムンダ諸語の言及

【アウストロアジア語族】より

…G.Difflothによる分類によれば,そのおもなものは以下の通りである。(1)ムンダ諸語Munda(インド)(a)北ムンダ語派 サンターリー語Santali,ムンダーリー語Mundariなど(b)南ムンダ語派 カーリア語Kharia,ソーラ語Soraなど(c)西ムンダ語派 ナハーリー語Nahali(2)ニコバル諸島諸語Nicobarese(3)モン・クメール語族Mon‐Khmer(a)カーシー語派Khasi(アッサム地方) 標準カーシー語Standard Khasiなど(b)パラウン語派Palaungic(ビルマ) パラウン語Palaung,ワ語Wa,ダノ語Danaw,ラワ語Lawaなど(c)モン語派Monic(ビルマ,タイ) モン語Monなど(d)クム語派Khmuic(タイ,ラオス) クム語Khmu,ラメート語Lametなど(e)ベト・ムオン語派Viet‐Muong(ベトナム) ベトナム語Vietnamese(南・北等の方言がある),ムオン諸語Muong(正しくはMu’o’ng)など(f)カトゥ語派Katuic(ベトナム) カトゥ語Katu,ブル語Bru,クイ語Kuy,パコ語Pacohなど(g)バナル語派Bahnaric(ベトナム,カンボジア) スティエン語Stieng,チュラウ語Chrau,スレ語Sre,ムノン語Mnong,ロベン語Loven,ブラオ語Brao,バナル語Bahnar,セダン語Sedangなど(h)ペアル語派Pearic(カンボジア) ペアル語Pear,チョン語Chong,サムレ語Samreなど(i)クメール語Khmer(カンボジア,ベトナム,タイ。北・中・南等の諸方言がある)(j)ジャハイ語派Jahaic(マレーシア) ジャハイ語Jahaiなど(k)セノイ語派Senoic(マレーシア) テミアル語Temiar,セマイ語Semaiなど(1)セメライ語派Semelaic(マレーシア) セメライ語Semelaiなど この中で政治・文化的に重要なのは,モン・クメール語族に属するクメール語(カンボジア語),ベトナム語モン語で,前2者はいずれも国語であり,モン語は古く栄えたモン族の言語として,ビルマ(現,ミャンマー)とタイとに文化的に大きな影響を与えた。…

【ムンダ族】より

…インドの中・東部に住む部族の一つで,人口は約600万人。とくにビハール州のチョタ・ナーグプルの丘陵地帯に集中している。本来は北西部インドにいたが,アーリヤ人の侵入を受けて現地帯に移動した。人種的にはプロト・オーストラロイドに属し,言語的には東南アジア大陸部に広がるアウストロアジア語族に属する。ムンダとは〈富裕で信望のある人〉の意味で,ヒンドゥーの人々による呼称であり,ムンダ族自身の自称は〈ホロ〉で人間という意味である。…

【アウストロアジア語族】より

…G.Difflothによる分類によれば,そのおもなものは以下の通りである。(1)ムンダ諸語Munda(インド)(a)北ムンダ語派 サンターリー語Santali,ムンダーリー語Mundariなど(b)南ムンダ語派 カーリア語Kharia,ソーラ語Soraなど(c)西ムンダ語派 ナハーリー語Nahali(2)ニコバル諸島諸語Nicobarese(3)モン・クメール語族Mon‐Khmer(a)カーシー語派Khasi(アッサム地方) 標準カーシー語Standard Khasiなど(b)パラウン語派Palaungic(ビルマ) パラウン語Palaung,ワ語Wa,ダノ語Danaw,ラワ語Lawaなど(c)モン語派Monic(ビルマ,タイ) モン語Monなど(d)クム語派Khmuic(タイ,ラオス) クム語Khmu,ラメート語Lametなど(e)ベト・ムオン語派Viet‐Muong(ベトナム) ベトナム語Vietnamese(南・北等の方言がある),ムオン諸語Muong(正しくはMu’o’ng)など(f)カトゥ語派Katuic(ベトナム) カトゥ語Katu,ブル語Bru,クイ語Kuy,パコ語Pacohなど(g)バナル語派Bahnaric(ベトナム,カンボジア) スティエン語Stieng,チュラウ語Chrau,スレ語Sre,ムノン語Mnong,ロベン語Loven,ブラオ語Brao,バナル語Bahnar,セダン語Sedangなど(h)ペアル語派Pearic(カンボジア) ペアル語Pear,チョン語Chong,サムレ語Samreなど(i)クメール語Khmer(カンボジア,ベトナム,タイ。北・中・南等の諸方言がある)(j)ジャハイ語派Jahaic(マレーシア) ジャハイ語Jahaiなど(k)セノイ語派Senoic(マレーシア) テミアル語Temiar,セマイ語Semaiなど(1)セメライ語派Semelaic(マレーシア) セメライ語Semelaiなど この中で政治・文化的に重要なのは,モン・クメール語族に属するクメール語(カンボジア語),ベトナム語モン語で,前2者はいずれも国語であり,モン語は古く栄えたモン族の言語として,ビルマ(現,ミャンマー)とタイとに文化的に大きな影響を与えた。…

※「ムンダ諸語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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