ムレキシド

化学辞典 第2版 「ムレキシド」の解説

ムレキシド
ムレキシド
murexide

ammonium purpurate.C8H8N6O6(284.19).プルプル酸アンモニウム塩にあたる.アロキサンをアルコール性アンモニアと加温するか,酢酸中でアロキサンチン塩化アンモニウムとを反応させると得られる.普通のものは一水和物で,緑色の光沢をもつ赤色板状または柱状晶.融点 > 300 ℃.pKa1 0,pKa2 9.2,pKa3 10.5.λmax 520 nm(水).無水エタノールエーテルに不溶,水に難溶.水溶液は pH < 0で黄,pH~9で赤紫,pH 9~11で紫,pH > 11で青色にかわる.熱水,水酸化カリウム,希塩酸で分解し,ウラミルとアロキサンまたはアロキサンチンになる.EDTA滴定における金属指示薬,カルシウムの比色定量試薬に用いられるほか,酸化によってアロキサンを生じる尿酸の誘導体(カフェイン,テオブロミンなど)をほかのプリン塩基と識別するムレキシド呈色反応に用いる.[CAS 3051-09-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムレキシド」の意味・わかりやすい解説

ムレキシド
むれきしど
murexide

プルプル酸アンモニウム塩の別名。酢酸中でアロキサンチンと塩化アンモニウムとを反応させると得られる()。化学式C8H8N6O6、分子量284.2。緑色の光沢をもつ赤色結晶で、水にはわずかに溶けるが、エタノール(エチルアルコール)、エーテルには溶けない。水溶液は水素イオン濃度指数(pH)が0以下の強酸性では黄色、pH0~9で赤紫色、pH9~11で紫色、pH11以上で青色に変色する。水溶液は不安定で、ウラミルとアロキサン、またはウラミルとアロキサンチンに分解すると退色する。EDTA(エチレンジアミン四酢酸)滴定の金属指示薬として、カルシウム、銅(Ⅱ)、コバルトニッケルなどの金属イオンの滴定に使用する。ムレキシドは尿酸誘導体を硝酸などにより酸化した際にも生成し、特有な赤紫色を呈するので、この反応はカフェイン、テオフィリンなどの尿酸誘導体の検出反応として知られていて、ムレキシド反応という。

[廣田 穰]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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