ムラサキシジミ(英語表記)Narathura japonica

改訂新版 世界大百科事典 「ムラサキシジミ」の意味・わかりやすい解説

ムラサキシジミ
Narathura japonica

鱗翅目シジミチョウ科の昆虫。表面は紫色に輝き,黒褐色の縁取りがある。裏面はじみな暗褐色である。開張3.2~3.7cm。台湾,朝鮮半島および日本に分布する。日本では本州の宮城県以南,四国,九州を経て南西諸島に達する。主として照葉樹林にすみ幼虫ブナ科常緑樹アラカシアカガシなどの新芽を食べるが,コナラクヌギなどの落葉樹を食べることもある。南西諸島ではオキナワウラジロガシが食樹となる。本州から九州の暖地では年3~4回,南西諸島では年5~6回発生し,成虫のまま照葉樹の葉表にとまって越冬する。成虫は6月上旬ころから羽化し,晩秋まで見られる。成虫の日中の行動は目だたないが,夕方樹上を活発に飛ぶ習性がある。初夏から盛夏にかけてはアブラムシの分泌物に集まるものや葉上で吸水するものがよく見られるが,晩秋にはソバサザンカの花を訪れるのを見ることが多い。幼虫は食樹の新芽を重ねて巣をつくる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムラサキシジミ」の意味・わかりやすい解説

ムラサキシジミ
むらさきしじみ / 紫小灰蝶
[学] Narathura japonica

昆虫綱鱗翅(りんし)目シジミチョウ科に属するチョウ。本州(関東地方以西の暖地)、四国、九州より琉球(りゅうきゅう)諸島にかけての照葉樹林に分布する普通種。国外では朝鮮半島南部、台湾にも産するが、対岸の中国大陸からは知られていない。はねの開張35ミリメートル内外。はねの表面は外縁の黒い縁どりを除き、雌雄とも濃紫色に輝く。裏面は灰褐色で不鮮明な斑紋(はんもん)がある。越年した母チョウから生まれた卵が成虫になるのは九州の平地で5月下旬~6月上旬ごろから、以後は連続的に発生して秋まで数回の世代を繰り返し、秋に発生したものはそのまま成虫で越冬する。幼虫の食草は常緑性のカシ類(アラカシ、アカガシ、その他)。カシ類の新芽のない場所や季節には、落葉性のブナ科植物(コナラ、クヌギ、ミズナラ、カシワなど)につくこともある。

[白水 隆]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムラサキシジミ」の意味・わかりやすい解説

ムラサキシジミ
Narathura japonica

鱗翅目シジミチョウ科。雌雄とも黒色の広い帯で縁どられた濃い紫藍色の美しいシジミチョウ。前翅の開張幅約 34mm。前翅先端は角張る。裏面は地味な灰褐色にやや濃い斑紋が並ぶ。常緑樹林にすみ,活発に飛ぶが,わずかに飛んですぐに止ることが多い。多化性で,成虫のまま単独ないし数匹の小集団で越冬する。幼虫の食草はブナ科のアカガシ,アラカシ,ウラジロガシ,スダジイなど。クヌギ,コナラにつくこともある。本州,四国,九州,南西諸島,国外では台湾,朝鮮半島南部に分布する。

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百科事典マイペディア 「ムラサキシジミ」の意味・わかりやすい解説

ムラサキシジミ

鱗翅(りんし)目シジミチョウ科の1種。本州(関東以西)〜沖縄,台湾に分布。開張35mm内外,美しい紫色で外縁は黒い。裏面は枯草に似る。幼虫はカシ類の葉を食べ,成虫は6月より数回発生,成虫で越冬する。

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